研究課題/領域番号 |
24650181
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
遠山 稿二郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10129033)
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キーワード | 電子顕微鏡 / 連続切片 / 反射電子像 / 三次元構築 / 細胞間隙 / ランヴィエ絞輪 / 中枢神経 |
研究概要 |
本研究課題に必須の反射電子像を取得できる走査電子顕微鏡が本学に導入され、他大学施設の利用の必要がなくなったため、初年度と比べ、格段にデータ収集の効率が上がった。一方、液体ヘリウムの入手が極めて困難となり、液体ヘリウムによる新たな凍結試料の作製は1回のみの実施となった。今後、液体ヘリウムの入手環境は改善されない、との見通しであるため、本研究課題においては、これまで作製された試料を最大限に活用し、可能な範囲での研究とならざるを得ない。幸い、初年度に作製した試料の状態が良好であるため、これらの材料を活用することで、最終的には解析に値するデータを得ることができるよう努力したい。 本課題の焦点別にのべると、初年度から実施している申請書焦点課題(ii)絞輪部の細胞成分および細胞間隙については、連続切片を基に、ラット視神経において、46か所の絞輪部三次元構造を再構築し、次の新知見を得ることができた。(1)絞輪部軸策周囲を囲む要素は、50%以上が細胞間基質であること、アストロサイト、残りの約25%はミクログリア、NG2陽性細胞などであること。(2)約70%の絞輪部の軸策から、雨だれのような突起が観察され、これらの突起部分には細胞内小器官あるいは膜様構造物が含まれ、これらの突起の80%以上はグリア細胞によって囲まれていた。(3)絞輪部の軸策の直径と絞輪部の長さは特定の関連を持たない。これに続き、焦点課題(iii)シナプス周囲の超微形態の把握についても、2軸トモグラフィーで得られたデータを3次元解析することで、明瞭なシナプス間隙の超微細構築を把握できた。しかし、焦点課題(i)については、超薄切片の厚さ(70nm)が検索対象の構造に対して厚すぎるため、連続的に十分な追跡ができないことが明らかとなり、20-30nmの超薄切の実施の方策を考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、本課題に必要な機器が本学に設置されていなかったため、他大学施設を利用していた。そのため、十分なデータを取得することができなかったが、本年度、当該機器が学内に整備され、順調にデータ取得を進めることができた。3つの焦点課題のうち、2課題については、ほぼ目的を達成できる段階にある。残り一課題は、本研究期間では達成できない可能性も出てきた。 また、世界的な液体ヘリウムの不足により、基礎研究になかなか供給されなかったため、本年度予定した実験回数をこなすことができなかった。しかし、初年度の蓄積もあり、現時点での解析能力を考えると、十分な試料を得ていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
焦点課題(i)については、振動型ダイアモンドナイフ(Ultra-sonic/Diatome)を活用し20-30nmの超薄切の作製を試みる。 また、コモン・マーモセットの試料はすでに作製してあるので、最終年度では、これまでラット試料で行った(ii),(iii)の手法と同様に解析を進める予定である。 これまで集積した結果の論文作製、学会発表を行う。この際、できる限り、マーモセットのデータにも言及したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた急速凍結の実験が「液体ヘリウム不足」により入手困難となり、大幅に経費が残ったため。(7万X7回分) また、論文作製のための英文校閲に関わる経費が必要なかったため(10万円)。 コモン・マーモセットの固定脳を有効に活用、処理するための経費(免疫染色のための抗体、金コロイド標識抗体、水溶性包埋剤の購入経費:計60万)、および、論文作製の諸経費(10万)、国際学会情報収集・発表のための経費(50万)に当てる予定である。
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