研究課題
近年、神経変性疾患の分子病態解析が進展し、それら疾患の発症にオートファジー・リソソーム系等の細胞内恒常性維持機構の変調が関わっていることが明らかにされつつある。しかし、これまでに、その様な機構の改善を目指した疾患治療薬の開発研究はほとんど行われていない。本研究では、細胞内恒常性維持機構の改善を定量的に測定する手法を開発することにより、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する新たな新規治療候補化合物スクリーニング系を確立することを目指す。具体的には、細胞・個体レベルでのオートファジー動態の可視化を可能にする新たなツールを開発するため、 mKeima-RedとLC3Bの融合タンパク質を発現する新たな発現コンストラクトの作製と同融合タンパク質を発現する新規トランスジェニック(TG)マウスの作出実験を実施した。まず、CAGプロモーターの制御下でmKeima-RedとヒトLC3Bの融合タンパク質を発現するベクターを作製した。この発現ベクターをHeLa細胞に導入し、Keima-Red_LC3B融合タンパク質の発現を生化学的、細胞生物学的手法により解析し、培養細胞でのオートファジー動態の解析を行った。同時に、C57BL/6マウスの受精卵に当該発現ベクターをマイクロインジェクション法で導入し、TGマウス作出を試みた。その結果、培養細胞実験により、mKeimaRed_LC3Bがオートファゴソームの成熟過程をモニターすることに成功するとともに、神経系及び心筋・骨格筋においてmKeimaRed_LC3Bを発現する3系統の新規TGマウスを樹立することに成功した。従って、本研究の遂行により、これまでには無かった新たなオートファジー動態の可視化のためのツールを開発することができた。今後、これらのツールを用いて、ALS新規治療候補化合物のスクリーニングを継続する必要があると考えている。
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Amyotroph. Lateral Scler. Frontotempo. Degen.
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doi:10.3109/21678421.2015.1009466