研究課題/領域番号 |
24650192
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
曽良 一郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40322713)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | モノアミン / ドーパミン / メチルフェニデート |
研究概要 |
注意欠陥・多動性障害(AD/HD)は主に小児の精神疾患であり多動性、不注意、衝動性を症状の特徴とする発達障害の一つである。AD/HD患者から人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作成するにあたり、適切な基準による患者の選定が本研究の推進には重要となる。現在、国立国際医療研究センター国府台病院の連携研究者と共同で、研究に協力可能なAD/HD患者の選定を進めている。対象にはDSM-IVのAD/HD診断基準に合致し、簡易構造化面接法であるM.I.N.Iを実施して併存障害が合併していない小児期の患者としている。患者の症状を可能な限り統一するための選定の作業を行なっている。 一方でiPS細胞を使用しての神経細胞への分化を行うにあたり、実験系の確立を進めている。iPS細胞と同様に多能性幹細胞である胚性幹細胞(ES細胞)を使用して、カテコールアミン神経細胞への分化誘導の実験の確立を行った。分化誘導にはSDIA法を用い、誘導後14日ではカテコールアミン神経細胞の指標となるチロシン水酸化酵素が発現していることを確認した。また、カテコールアミン神経の中でもドーパミン神経細胞は従来のSDIA法で作製可能であったが、ノルエピネフリン神経細胞は作製できないため、ノルエピネフリン神経細胞を作製するための条件の検討を行なっている。過去の知見から、生体内においてノルエピネフリン神経細胞の分化にはBMP4が必要であることが明らかになっていたため、SDIA法の分化誘導培地に各濃度条件としたBMP4を添加しノルエピネフリン神経細胞への分化を試みたが、現在までのところ誘導条件は確定していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究には小児のAD/HD患者の選定と研究への同意が必要であるが、症状の質を勘案した適切な患者の選定に対して当初の予定よりも時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
診断条件に合致する小児のAD/HD患者から血液サンプルを提供いただき次第、iPS細胞の作製を開始する。作製したiPS細胞を用いて、本年度確立を進めたカテコールアミン神経細胞への分化誘導条件により神経細胞を作製し、神経の形態や遺伝子発現を健常群と比較し、神経科学的、精神薬理学的解析を行う。さらに、代表的なAD/HD治療薬(アンフェタミン、メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン)を投与した際の形態変化、遺伝子発現変化を比較検討することで、AD/HD治療薬が患者由来と健常人由来のモノアミン神経細胞への作用の違いを検討する。iPS細胞から分化誘導された神経細胞の樹状突起やスパイン密度を計測して発達過程の解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画したAD/HD患者由来のiPS細胞作製を次年度に延期することによって生じたものであり、延期したiPS細胞の作製に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。具体的には、研究協力者への謝金、研究を進めるために必要な細胞培養やiPS細胞作製に用いる培地や試薬類に研究費の大半を使用する。得られた研究成果の発表や最新の研究の情報収集のために学会に参加する。
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