研究課題/領域番号 |
24650194
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 知之 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90372367)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | インターロイキン1受容体 / シナプス形成 |
研究概要 |
IL-1RAcPタンパク質はインターロイキン(IL)-1受容時の細胞内シグナル伝達を担うIL-1受容体複合体の共通サブユニットである。IL-1RAcPは炎症反応の惹起されていない中枢神経系においても広く発現することが知られている。私達はIL-1RAcPを発現させた繊維芽細胞と大脳皮質神経細胞を共培養するとIL-1RAcPを発現する繊維芽細胞に接する神経細胞にシナプス前部構造が誘導されることを見出した。従ってIL-1RAcP神経細胞に対してトランスにシグナルをいれる細胞接着分子として機能することが示唆された。受容体型チロシン脱リン酸化酵素PTPδがIL-1RAcPの受容体であることを明らかにした。報告されている7種のIL-1受容体のうち中枢シナプス形成に関与するものはIL-1RAcPのみであった。IL-1RAcPには中枢神経細胞のみに発現する細胞内領域の構造の異なるスプライスバリアント(IL-1RAcPb)が報告されている。培養神経細胞にIL-1RAcP及びIL-1RAcPb共通の配列を標的としたsiRNAを導入するとスパインの減少とアクティブゾーンマーカーの減少が認められ、シナプスが減少することがわかった。このsiRNA耐性のIL-1RAcPb cDNAを神経細胞に導入するとスパイン及びアクティブゾーンの減少は完全にレスキューされた。一方、siRNA耐性のIL-1RAcPb cDNAを神経細胞に導入すると、アクティブゾーンの数は回復したが、スパイン数は回復しなかった。従ってIL-1RAcPbはシナプス後部の形成に特に重要であることが示唆された(Yoshida et al., 2012)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りIL-1受容体ファミリーの全分子についてシナプス前部誘導能の有無を確認した。さらにIL-1RAcPのシナプス誘導に於ける受容体としてPTPδをはじめとする2A型受容体チロシン脱リン酸化酵素が機能することを見いだし、予定以上の進展があった。一方でインターロイキン1ファミリーサイトカインの発現系の構築は至適な発現培養細胞の選択に時間がかかり、遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、インターロイキン1サイトカインの発現精製系の構築を行い、IL-1RAcPのシナプス誘導活性にインターロイキン1が関与するか否かを検証する。また、IL-1RAcPとPTPδの結合をインターロイキン1が調節するか否かを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
IL-1RAcPのシナプス誘導活性におけるIL-1の影響を調べるために、リコンビナントインターロイキン1ファミリーサイトカインが不可欠であり、ほ乳類細胞を用いたこの発現、精製に100万円程度が必要である。23年度はインターロイキン1の発現精製系の構築がずれ込んだため、この経費が生じた。また、次年度にはIL-1RAcP欠損マウスの購入に80万円程度必要である。IL-1RAcP欠損マウス及びPTPδ欠損マウスの飼育費として年間50万円が見込まれる。
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