前年度までにインターロイキン(IL)-1受容時の細胞内シグナル伝達を担うIL-1受容体複合体の共通サブユニットであるIL-1RAcPタンパク質が受容体型チロシン脱リン酸化酵素PTPδとの結合を介して興奮性シナプス誘導を担うことを明らかにした。また、IL-1RAcP欠損マウスでは大脳皮質2/3層及び海馬CA1領域の錐体神経細胞の樹状突起上の興奮性シナプス後部構造(スパイン)密度が野生型マウスに比べて減少することが判った。これらの脳領域ではPTPδ欠損マウスにおいてもスパイン密度の減少が認められており、個体レベルでもIL-1RAcP-PTPδ複合体がシナプス形成に寄与することが示唆された。 通常のIL-1サイトカイン受容の際にはIL-1RAcPはIL-1βを直接受容する1型IL-1受容体(IL-1R1)と複合体を作り、細胞内へシグナルを伝達する。そこで、IL-1RAcP-PTPδの結合をIL-1R1/IL-1βが阻害するか否かを調べた。その結果、IL-1RAcPへの結合に対してPTPδとIL-1R1/IL-1βは互いに競合することなく、高次の複合体を形成することが明らかとなった。更にIL-1RAcPとPTPδの結合はIL-1R1/IL-1β存在下でむしろ強化されることが判った。このことから、IL-1R1/IL-1βがIL-1RAcP-PTPδ複合体へ働きかけ、シナプス形成を調節する可能性が示唆された。
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