研究課題
乳児期の発達過程には、様々な遺伝子やシグナル伝達経路が関与し、それらの遺伝的変異は自閉症や精神発達遅滞といった発達障害を引き起こすことが知られている。申請者は、先行研究(自閉症関連タンパク質のプロテオミクス解析)の中で、fragile X mental retardation protein 1(FMRP)が、他の精神遅滞関連タンパク質DEAF1と複合体を形成する可能性を見いだした。本研究の目的は,両者がマウス脳内で複合体を形成すること,またその機能的重要性を明らかにすることを通じて、脳の発達過程の分子メカニズムを解明することである。研究成果を通して、高次脳機能の発達を支える普遍的な分子経路を理解すること、さらに発達障害に対する新たな治療法の開発への足がかりになることを目指した。二つの精神遅滞関連遺伝子FMR1とDEAF1の遺伝子発現をマウス脳を用いた蛍光免疫染色で確認したところ、いずれも終末分化した神経細胞内に高い発現を示した。両者の相互作用については、生後6週齢のマウス脳抽出液を用いて、免疫沈降法~ウェスタンブロッティングによる解析を行った。しかしながら、各種抗体を用いて行った免疫沈降法による濃縮効率はいずれも不十分であり、再現性ある結果を得ることができなかった。一方、DEAF1の新たな結合パートナーをスクリーニングし、DEAF1の局在パターンを核内から神経軸索に変化させる因子の候補を得ることができた。さらに、DEAF1が細胞内で調節する分子シグナルを同定したことで、DEAF1の神経成熟過程における生理学的機能について挑戦的萌芽研究に資するデータを得ることができた。以上の結果を踏まえ、現在、さらにインパクトの高い論文作成への準備を進めている。
3: やや遅れている
当初は3年間の実験計画であったが、現在行程の中程である。その理由として、DEAF1に対する市販抗体による免疫沈降の効率が不十分であり、実験の再現性が乏しかった。従って、当初の目的を達成するには、DEAF1に特異的、かつ免疫沈降が可能な抗体作成が必要である。現在、当初と目的は異なるが、速やかな論文作成を目指してデータを取得中である。
今後、DEAF1の機能そのものに焦点を当てた研究に方針を転換する。具体的には、細胞培養実験を中心に、DEAF1の調節する分子シグナル経路を確定し、DEAF1の細胞内局在変化にともなう標的シグナル活性の差異について検討する。
微細な支出額の不足(\7,478)次年度で問題なく使用予定
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