研究課題
ドーパミンは、運動の制御に重要な神経伝達物質であることが知られているが、これまでの先行研究でドーパミン欠乏マウスを用いて運動を評価したところ、L-ドーパ投与中止72時間後のほぼドーパミンが完全に枯渇した状態において、予想に反して新奇環境下での運動量の亢進が引き起こされることを見出してきた。このことは、運動自体はドーパミンがなくても可能なことを示していると考えられる。この機序を見出すために、様々な抗精神病薬、神経伝達物質のアゴニスト、アンタゴニストを用いて、運動量の変化を調べたところ、クロザピンによって亢進した運動量が抑制されることが認められた。また、クロザピンの多彩な作用のうち、アセチルコリン系の促進作用が運動量抑制に重要であることも見出された。これに伴い、線条体におけるアセチルコリン濃度の低下および、アセチルコリン合成酵素であるコリンアセチルトランスフェラーゼタンパク質およびmRNAの発現量が低下していることを認めた。これらより、ドーパミン欠乏時における運動量の亢進はアセチルコリンの低下と関連していると考えられた。この成果は、2014年度にNeuropsychopharmacology誌に掲載された。さらにドーパミン欠乏時における運動量亢進の機序を明らかにするため、L-ドーパ投与中止72時間後に新奇環境下におき、運動量の亢進を誘発させたのち、脳を採取し、c-FOSの免疫染色を行い、野生型マウスと比べ、活性化している神経細胞がどの部位に増加、あるいは減少しているか、検討を行った。その結果、線条体や海馬の一部において、強い神経細胞の活性化を示す所見を見出した。これらの部位は、新奇環境に反応して活性化することや、運動制御に関わることが示唆されている部位で、ドーパミンの欠乏により、通常以上の活性化が誘導されることで運動量亢進が引き起こされる可能性があると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Neuropsychopharmacology
巻: 40 ページ: 1141-1150
10.1038/npp.2014.295
http://www.igakuken.or.jp/topics/2014/1105.html