研究課題/領域番号 |
24650212
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
大野 哲生 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (30233224)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 筋原線維 / 水 / 疎水性相互作用 / 筋タンパク質 |
研究概要 |
以前測定した硬直条件では、筋原線維表面から500nmほどの距離まで動きの束縛された水が分布することが示唆されていたが、今回グリセリン筋を用いて弛緩条件の筋原線維懸濁液のNMR測定を20℃で行い、弛緩条件ではこの動きの束縛された水の層が筋原線維外には殆ど見られなくなることがわかった。 また7℃、34℃で同様の測定を行った。弛緩状態では筋節内部にしか存在しないと考えられる動きの束縛された水は、硬直状態と同様に、疎水相互作用に類似した束縛を受けていることが分かった。 これらのことから筋タンパク周囲の水分子は、疎水性相互作用に類似した束縛を受けており、硬直から弛緩になるときにその量が大きく減少することが示唆される。 ミオシン頭部でATPを加水分解しながらアクチンとミオシンのクロスブリッジの結合乖離が起こることで筋肉は張力を発生しているが、このクロスブリッジの結合乖離のサイクル中に硬直性のクロスブリッジが形成されることは知られている。 今回測定された硬直と弛緩状態での、束縛された水の量の大きな変化は、収縮のキネティクスに何らかの寄与をしている可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているが、当初予定していたミオシン溶出した筋原線維懸濁液のNMR測定は行っていない。これは弛緩溶液に含まれるATPはミオシンに結合し筋肉を弛緩状態に導くため、ミオシンを溶出してしまった筋原線維には結合しないことが考えられる。このため、ミオシン溶出した筋原線維懸濁液のNMR測定結果は硬直状態と弛緩状態では同じになるものと考えられたためである。しかし、ミオシンへのATP結合が水の束縛量の変化の原因であることを決定付けるためには必要であるため、今後速やかに測定を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は前年度行わなかったミオシン溶出をした筋原線維懸濁液のNMR測定を行い、さらに予定していた細いフィラメントをゲルゾリンによって切断した筋原線維懸濁液のNMR測定も行う。ゲルゾリンはウシ血清から当研究室内で精製する。手技はほぼ確立しており活性の十分高いゲルゾリンが得られている。実験に先立って用いるゲルゾリンの濃度と作用時間の決定を実際の筋原線維を用いて行う。 また重合ミオシン懸濁液のNMR測定も行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
重合ミオシンは筋原線維標本を作製した同じ固体から異なる部位の筋肉を材料とすることで精製することができる。ため、本年度の測定もほぼ同程度の実験動物が必要になる。試薬等も同程度の量が必要となる。
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