研究課題/領域番号 |
24650213
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大木 高志 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (80443480)
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キーワード | 心筋 / 筋収縮 / SPOC / アデノウイルス / 拡大型心筋症 / 拡張型心筋症 |
研究概要 |
H24年度で得られたヒトiPS細胞由来の心筋細胞に、心筋症変異タンパク質をコードするアデノウイルスを感染させ、拍動およびSPOC(自律振動現象)測定を行った。 1)ヒトiPS細胞由来の心筋細胞による拍動およびSPOC(自律振動現象)測定 Wntシグナル制御因子の添加により、培養ヒトiPS細胞(フィーダーレス培養)を、胚様体形成を経て心筋細胞へ分化させた後、ヒトアクチニン2-TagRFPをコードしたアデノウイルス(adeno-hActinin2-TagRFP)を感染させることによりZ線の蛍光イメージングを行った。細胞外液をカルシウムイオンチャンネル作用物質を含むpCa5.75の溶液に置換することにより、ヒト心筋細胞でSPOC現象を起こさせることに成功した。 2)心筋症変異アクチン遺伝子を導入したヒト心筋細胞によるSPOC測定 肥大型および拡張型の心筋症変異アクチン遺伝子(変異アクチン-IRES-EGFP)をコードする8種類のアデノウイルスと、adeno-hActinin2-TagRFPをそれぞれ共感染させ、サルコメア長の経時変化を測定した。症状が重い変異を導入した心筋細胞では、振幅と収縮時間において明らかに野生型とは異なる挙動を示しているが、当初の目的であるSPOC現象においてのみ検出できるパラメータ異常は見つかっていない。そこで今後はカルシウム感受性に大きな影響を与えないトロポニン変異導入を計画しており、例えばSPOC誘起可能なpCa濃度の違いなど、SPOC現象でのみ見られる変異の影響を網羅的に調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度で得られたヒトiPS細胞由来の心筋細胞を用いてSPOC現象を確認できたこと。さらに実際に心筋症変異遺伝子を導入したヒト心筋細胞において、野生型と異なる動態が見られたことが挙げられる。ヒト由来の心筋細胞から心筋症変異遺伝子導入とSPOC測定まで、一連の測定系が確立できており、現在までのところ、本研究はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はSPOC現象にのみ変異の影響(拍動では検出できない)を検出できるような心筋症変異の探索を行い、わずかな変調をきたすような(目安として40~50歳以降に発症する)心筋への負荷を検出できる検査システム構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
翌年度は多数の心筋症変異遺伝子導入を行う予定であり、培養試薬や遺伝子導入試薬など消耗品の使用額が大幅に増加することが予想されるため、今年度の研究費を減額した。 心筋分化用試薬、細胞培養試薬、遺伝子構築に必要な試薬、および一般試薬等、消耗品に経費1,000千円を計上する。また心筋動態を記録する記録媒体(ハードディスク)や記録装置に150千円、学会等研究成果発表の旅費に400千円計上する。
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