研究課題
近年、チャネルロドプシン等(Yizharら, Neuron, 2011)の光感受性機能分子が飛躍的な発展を見せ、神経回路機能の研究に大きく寄与するようになってきた。本研究は、光感受性機能分子を励起するための光刺激装置の開発に関する研究である。細胞やシナプスなど光刺激したいターゲットは脳内に3次元的に分布している事が多い。細胞などを局所的に光活性化する方法としてレーザーのピンポイント照射、Digital Mirror Device(DMD)やLiquid Crystal On Silicon(L-COS)を用いた多点照射などがある。しかし、いずれも2次元の技術であり、Z軸方向の移動には瞬時におこなうことができないため3次元空間の複数のポイントに瞬時に自由にレーザー照射を行うことは困難である。そこで、本研究では新たに可視光レーザーの焦点調節を現在主流の圧電素子を使用した高速技術より1000~10000倍高速化した顕微鏡用光刺激装置の開発をおこなった。レーザー光源としてチタンサファイアによる極長短赤外線パルスレーザーを用いた。高速焦点移動にはタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)結晶を使用した可変焦点レンズを用い、KTN結晶に0V~1000Vまでの電圧を加えて焦点調節を行った。KTN結晶は電気光学(EO)デバイスであり、高速動作が可能である。0Vから900V負荷時では~23マイクロ秒で焦点移動した。赤外線を可視光に変換するために非線形光学現象を利用しバリウムボレート(BBO)結晶および周期分極反転させたチタン酸リン酸カリウム(ppKTP)結晶を用いて第二高調波発生(SHG)の原理で可視光を発生させた。このレーザー光を顕微鏡に導入し、焦点移動を確認した。本技術開発により光操作技術が飛躍的に進歩し、それを利用する脳科学を含む自然科学、および工業分野で大きな前進が期待できる。
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