本研究は「長期記憶」形成に伴う脳内遺伝子発現変化を可視化する技術基盤の開発を目的としている。そのために、学習能力がある生きた脳でのRNA dynamics imagingの技術を確立する必要がある。 平成25年度は平成24年度に引続きマウスの小脳へのプローブ導入およびイメージング技術を確立する実験を行って評価した。poly (A) RNAに加え特異的ノンコーディーングRNAの検出も試みた。In vivoラベリングの正確性および特異性、さらに、ターゲットRNAに及ぼすプローブの影響を検証した。検証実験としては、定量RT-PCR、タンパク質の発現、in situと免疫染色の同時検出等の手法を用いた。その結果をまとめると、1) in vivo RNA蛍光ラベルに高い特異性がある;2)ターゲットRNAの発現レベルおよび機能への影響が検出されない;3) 核内RNA fociにおける空間配置の変化が検出可能であることがわかった。 こちらの観察結果は初めての生体内におけるRNA集合の観察になる。本研究で得られた結果から、ここまで確立した方法論では記憶によって動員される遺伝子の検出は核外へ移行するまでの間なら可能性があることが示唆された。今後は検出感度の向上および細胞質におけるイメージンについて検討していく予定である。さらに小脳だけではなく、大脳や脳深部におけるプローブの導入および観察法を確立する必要がある。
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