昨年度までに、当初の目標であるスポットアンケイジング法を用いた単一シナプス前終末の光刺激法については既に完成している。これによって、単一シナプス終末内Caを上昇させて、神経伝達物質放出を惹起し、シナプス後部でシナプス電流を測定することができるようになった。本年度は、このような光学的手法と比較する目的で、微小シナプス前終末(直径1-3ミクロン程度)から直接パッチクランプ記録をすることを試みた。具体的には培養および急性スライス標本小脳プルキンエ細胞シナプス前終末からの直接記録をおこなった。膜容量測定法を用いて伝達物質放出量をモニターした結果、シナプス後電流はGABA受容体の飽和によって、必ずしも伝達物質放出量に追随できない可能性が示唆された。すなわち、受容体の性質によって、シナプス伝達の強度がある程度決定されていることを意味する。終末膜容量測定法や、シナプス小胞イメージング法が、シナプス前終末からの伝達物質放出をより正確に測定できるのではないかと考えられる。 終末直接パッチクランプ記録によって、活動電位や、イオン電流の成分などの情報を得ることができる。また、ms前後の速い時間分解能の神経活動をモニターすることができるという点では優れている。一方で、パッチクランプ法は侵襲的であり、終末の生理的な状態をどこまで保てるかは疑問の余地がある。今後は、小胞イメージングを用いて終末の活動をモニターすること、膜電位感受性プローブを取り入れること、チャネルロドプシンなど光で終末を興奮させる方法などを組み合わせていくことが考えられる。
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