細胞内カルシウムを光で操作できる遺伝子改変マウスを樹立し、コミュニティーに提供することを目的とした。この目的のため、メラノプシンを細胞種特異的に発現させることができる遺伝子改変システムを構築した。まず最初は、プラスミドを用いた通常のtetOトランスジェニックマウスを作成した。オレキシン神経や海馬CA1錐体細胞にメラノプシンを発現させることに成功し、その神経活動を光で操作することができた。残念ながら、アストロサイトなどの非興奮性細胞に機能変化を引き起こすほどの高い発現量をもってメラノプシンを発現させることはできなかった。より高い遺伝子発現誘導を目指して、メラノプシン遺伝子そのものにSTOP-tetOをノックインする方法を用いた遺伝子改変マウスを作成した。予想に反してこのマウスはいかなるtTAマウスとの交配によってもメラノプシンを誘導させることができなかった。副次的な結果として、ホモ接合体はメラノプシンノックアウトマウスとして樹立できた。tetO-メラノプシントランスジェニックマウス、STOP-tetOメラノプシンノックインマウスともに理研バイオリサーチセンターへ供与し、誰もが使えるように手配した。 次にCa透過型チャネルロドプシンを発現する遺伝子改変マウスの作出を試みた。L132C/T159C変異体が現状で最もCa透過性が高いと言われていたので、この変異体を用いてCa上昇記録を試みたが、透過イオンのほとんどがNaイオンで、アストロサイトの機能を操作するレベルのCa濃度上昇が得られなかった。そのためCa透過型チャネルロドプシン発現マウスの作出を断念し、メラノプシン発現マウスの解析実験に労力を費やした。
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