本研究は,従来の脳磁図(MEG )計測に用いられてきた超伝導量子干渉素子を凌ぐ新たな超高感度光ポンピング原子磁気センサ(OPAM) によるMEG計測の実現と, MEGで捉えられる磁場を新原理の神経磁場依存(NMFD)-fMRIとして捉えることに挑戦することを目的として実施された.平成25年度は,前年度に引き続き、KとRbの2種類のアルカリ金属原子を混合したハイブリッドセルによる光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)の高感度化を継続すると共に、小型化を目指して開発を行っている光学系、ヒーターなどを一体化したモジュール型OPAMによる生体磁気計測を進めた。その結果,モジュール型OPAMの感度を10Hzにおいて20 fT/Hz1/2というヒトの脳神経活動に伴う極微弱な磁場を頭部外から計測することが可能であるレベルまで向上させることができた.その後,このモジュール型OPAMを用いて実際にヒトを対象とした脳神経磁場計測を実施し,開眼閉眼切り替え時のα波帯(8-13 Hz)における事象関連脱同期脳磁場の計測に成功した. 平成25年度は,さらに神経磁場により神経の含まれるMRボクセルの磁気共鳴信号変化を直接捉える新原理のNMFD-fMRI計測に向けた理論とファントム実験を実施した.本方法はスピンロック撮像法で用いられるMRIのパルスと神経磁場などの振動磁場との間に生じる磁気共鳴現象を利用するものである。本研究ではBloch方程式に基づくシミュレーションにより磁化の時間的な振る舞いを詳細に明らかにすると共にMR信号が変化することを確かめた。さらにファントムを用いた撮像実験においても、振動磁場によりMR信号が変化することを確認し、数百pT程度の振動磁場が検出可能であることを示した。これらの結果より、NMFD-fMRI手法の有用性が示された。
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