研究課題/領域番号 |
24650223
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 勇一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90378737)
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キーワード | オプトジェネティクス / カルシウムイメージング / チャネルロドプシン / 共焦点顕微鏡 / 内視鏡 |
研究概要 |
本研究は、脳に挿入した極細内視鏡を用いて脳機能のマッピングを行う方法の開発を目的としている。昨年度までに、Ca感受性蛋白質であるGCaMP7を発現させた様々な脳領域の内視鏡イメージングを行い、神経活動依存的な蛍光変化を検出することに成功した。しかしながら、電気刺激もしくは薬剤により刺激した集団的な活動は検出できるものの、個々の細胞の自発的な活動は検出できていなかった。この原因として、内視鏡の挿入によって内視鏡近傍の脳組織が損傷する、また、光学系に起因する画像のSN比の悪化が考えられた。そこで本年度はこれらの改善を目標とした。 まず、内視鏡の先端形状を最適化することにより、脳組織の損傷を軽減することに成功した。具体的には、従来の竹槍状もしくは円錐状から角錐状にすることにより、先端が鋭くなり挿入時の抵抗が減少した。その結果、従来は内視鏡挿入中において、損傷した細胞由来と思われる一過的Caシグナルの増大が認められたが、先端形状の変更によりそのような現象がなくなった。また、内視鏡とカメラを接続する光学系を変更することで画像の明るさが約4倍に向上した。 これらの改良の後、麻酔下において海馬CA1領域および大脳皮質V層の蛍光イメージングを行ったところ、蛍光強度の局所的な時間変化が認められたが、この蛍光強度変化は電気刺激時よりもかなり小さく、神経活動によるものかどうかは判明していない。今後は取得画像のデータ処理により1細胞毎の神経活動を抽出することを検討する。また、個々の細胞の蛍光を画像上で区別できるようにするため、Ca感受性蛋白質の発現細胞の密度を減らすことを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経活動のマッピングを行うには単一細胞あるいはそれに近い分解能で神経活動を検出する必要がある。しかし現状では細胞の集団的な活動を検出することは可能になっているが、個々の細胞の活動を分離することが出来ていない。今後、次項で述べる方法により単一細胞分解能での活動計測が可能になるか検討する。
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今後の研究の推進方策 |
現状では細胞の集団的な活動を検出することは出来ているが、個々の細胞の活動を分離することが出来ていない。これは内視鏡の視野内で複数の細胞の蛍光が重なり合っているためである。本内視鏡システムは共焦点光学系ではないため、軸方向に細胞が重なり合っていると各細胞からの蛍光シグナルを分離することができない。そこで以下2種の方法を検討する。 1.画像データから独立成分分析等のデータ処理を用いて個々の細胞の活動が抽出できるか検討する。 2.視野内で個々の細胞が重ならない程度にCaインジケータ発現細胞が疎らであれば個々の細胞の神経活動を分離できる。そこで、エレクトロポレーション等の遺伝子導入法を用いてCaインジケータの発現細胞密度を低下させることにより単一細胞分解能のイメージングが可能か検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度までに、目標としていた単一細胞分解能のカルシウムイメージングに成功していないため、次年度は現状考えられる問題点の改善を試み、単一細胞分解能が得られるか否かを検討する。また、研究成果の学会発表、論文発表を次年度に行うため、その費用として使用する。 実験の消耗品費用・論文出版費用・学会発表費用として用いる。
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