研究実績の概要 |
本研究は、脳に挿入した極細内視鏡を用いて脳機能のマッピングを行う方法の開発を目的としている。昨年度までにファイバーバンドル型内視鏡を用いた蛍光カルシウムイメージング法により、電気刺激由来の集団的な神経活動変化を検出することに成功していた。しかし、単一細胞由来の神経活動の検出はできていなかった。 本年度は、(1)光学系の改善による蛍光シグナルのSN比改善、(2)画像処理による単一細胞活動の抽出を検討し、活動中の動物から単一細胞由来の神経活動検出に成功した。 まず、従来より用いてきたファイバーバンドル型内視鏡は、バンドル全体の断面積のうち、光が通る部分は20%程度に過ぎず、細胞由来の蛍光がその分減弱してしまう欠点があった。そこで、これに代えて光の利用効率がほぼ100%と考えられるGRINレンズ型内視鏡を検討した。ただしファイバーバンドルは柔軟性があり動物の行動に追従できるが、GRINレンズはそれができず、動物とイメージング装置を固定する必要がある。そこで動物は頭部を固定してトレッドミルの上に乗せ、バーチャルリアリティ環境下で活動させながらイメージングを行った。 カルシウムセンサー蛋白質であるGCaMP7(Ohkura et al.,2012,PLOS One,7,e51286)を発現するトランスジェニックマウスの海馬歯状回に直径0.35mmのGRINレンズ型内視鏡を挿入して蛍光イメージングを行った。その結果、神経活動由来と思われる蛍光強度の明瞭な変化が観察された。さらに、独立成分分析を用いた神経活動の抽出法(Mukamel et al.,2009 Neuron,63,747)を用いて単一細胞由来の活動を抽出したところ、約40個ほどの活動が分離された。得られた神経活動波形は最大でベースライン変動の10倍程度の大きさがあり、神経活動解析をする上で十分なSN比を持つと考えられた。
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