研究課題/領域番号 |
24650229
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
千葉 親文 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80272152)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 再生医学 / 動物 / 発生・再生 / 細胞・組織 / 遺伝子 |
研究概要 |
成体イモリの再生メカニズムを遺伝子レベルで解析する新たな実験系の確立を目指し、本年度は以下の2つの項目について研究を行った。 1、胚・成体組織の個体間移植による系譜解析: 成体のEGFP/mCherryアカハライモリの前肢から、皮膚[表皮(外胚葉起源)と真皮(中胚葉起源)を含む]、筋肉[筋細胞と衛星細胞(いずれも中胚葉起源)を含む]、骨[骨芽細胞・骨細胞、破骨細胞、骨髄間葉細胞(いずれも中胚葉起源)を含む]を摘出し、同齢の別のイモリの同じ場所に移植した。その後、生着するまで3日間低温(18℃)で飼育した後、室温(22℃)で約1カ月間飼育した。これらの個体の前肢を移植箇所で切断し、100日後に再生した肢を切片にし、移植した組織がどの細胞・組織を再生したか調べた。その結果、皮膚由来の細胞が再生した肢の筋肉や骨の中に移動していることが分かった。一方、筋肉由来の細胞は筋肉に分化することが分かった。骨については、生着させることが難しく、今年度は結論にいたならなった。これらの結果から、皮膚(おそらく真皮)由来の細胞が、筋肉や骨の再生にかかわる可能性がでてきた。 2、組織特異的プロモーター/CreERT2システムによる系譜解析: 組織特異的プロモーターpCarA(筋細胞)とpPax3(衛星細胞)にCreERT2をつなぎ、タモキシフェンによりユニバーサルプロモーターの配下でmCherry発現を誘導するコンストラクトを作製し、I-SceI法によりトランスジェニック(TG)イモリの作製を試みた。しかし、発現が不安定であったため、原因を調べた結果、Cre-LoxPを同一コンストラクトにもつとそのDNAの調製が難しいことが明らかとなり、プロトコルの改良を重ね、現在、新規のプロトコルによりTGイモリを量産している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り順調に進んでいる。TGイモリの組織を移植し、再生過程における細胞系譜を解析することは非常に困難とされてきたが、今回これを初めて現実化した点は大きい。しかし、手技の問題から骨[骨芽細胞・骨細胞、破骨細胞、骨髄間葉細胞(いずれも中胚葉起源)を含む]や血球、骨髄幹細胞の関与がまだ明らかでない。また、神経束由来の細胞(シュワン細胞;外胚葉起源)の関与も調べる必要がある。 組織特異的プロモーター/CreERT2システムによる系譜解析についても、時間はかかったが最終的に新規TGプロトコルの確立に到達したことは大きな前進で、これにより組織特異的プロモーターを用いた細胞系譜解析が安定して稼働するようになっている。
|
今後の研究の推進方策 |
胚・成体組織の個体間移植による系譜解析については、肢再生における筋肉や骨などの関与について引き続き調査を継続するとともに、皮膚に着目し、皮膚中のどの細胞が再生芽をつくるのか、そして筋肉や骨に移動した皮膚由来の細胞は筋細胞や骨細胞に分化したかどうかについて、分化マーカーを用いて調べる方針である。また、表皮の関与についても、胚の組織移植により評価する。 組織特異的プロモーター/CreERT2システムによる系譜解析については、筋肉や衛星細胞由来の細胞の分化能を評価するとともに、皮膚(おそらく真皮)の関与が明らかになってきたことから、組織特異的プロモーターにpVimentin(線維芽細胞)を加え、真皮中の線維芽細胞の動態と多分化能についても明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
TGイモリの作製と移植後の系譜解析にかかる物品(実験動物、遺伝子導入用試薬、抗体、ディスポプラスチック器具)に使用させていただければ幸甚に存じます。
|