研究課題/領域番号 |
24650229
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
千葉 親文 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80272152)
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キーワード | 再生医学 / 動物 / 発生・再生 / 細胞・組織 / 遺伝子 |
研究概要 |
成体イモリの再生メカニズムを遺伝子レベルで解析する新たな実験系の確立を目指し、本年度は以下の2つの項目について研究を行った。 1.系譜解析: 成体mCherryトランスジェニックイモリの前肢から、皮膚[表皮(外胚葉起源)と真皮(中胚葉起源)を含む]や筋肉[筋細胞と衛星細胞(いずれも中胚葉起源)を含む]を摘出し、それぞれ同齢の別のイモリの同じ場所に移植した。生着した後(約1カ月後)、前肢を移植個所で切断し、約100日後に再生した肢を凍結切片にして移植した組織がどの細胞・組織に分化したか調べた。今年度は、昨年度うまくいかなかった骨[骨芽細胞・骨細胞、破骨細胞、骨髄間葉細胞(いずれも中胚葉起源)を含む]の移植にも成功した。例数を増やして解析した結果、皮膚由来の細胞は皮膚や軟骨、筋肉中の細胞に、筋肉由来の細胞は筋肉や軟骨中の細胞に、骨由来の細胞は軟骨や腱中の細胞になることが分かった。しかし、皮膚に由来する再生筋肉中の細胞や、再生軟骨の細胞に分化した移植筋肉中の細胞が、筋細胞と衛星細胞以外の細胞(繊維芽細胞等)である可能性がある。 皮膚の細胞を表皮と真皮に分けて追跡する目的で、胚操作により表皮のみにmCherryを発現するイモリを作製した。また、昨年度うまくいかなかった筋細胞特異的プロモーター/CreERT2システムを組み込んだトランスジェニックイモリの作製に成功した。 2.Cell-Killing methods による分化能解析: 再生芽中の特定の細胞を死滅させることで、残った再生芽細胞の肢再生に対する寄与を評価する実験系を開発する予定であったが、系譜解析に多くの時間が必要であったため着手できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨由来の細胞の追跡ができた点、および表皮や筋細胞に由来する再生芽細胞を追跡できるイモリができた点は、再生芽細胞の由来と分化能評価にとって大きな前進だと考えている。Cell-Killing methodsの実験系の開発には着手できなかったが、これによる再生芽細胞の分化能評価には系譜解析の結果が必要なため、系譜解析が前進したことはやはり大きい。また、Cell-Killing methodsを導入する方法論は他のプロジェクトにおいて確立している。
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今後の研究の推進方策 |
肢再生芽細胞の由来と分化能評価に研究内容を絞り込むことにする。まず、皮膚に由来する再生組織がそれぞれ表皮(外胚葉起源)由来かそれ以外の組織[真皮(中胚葉起源)を含む]に由来するかをはっきりさせる。さらに、皮膚に由来する再生筋肉中の細胞が何であるか、マーカー抗体により同定する。また、再生軟骨の細胞に分化した移植筋肉中の細胞が、筋細胞や衛星細胞か、あるいはそれ以外の細胞(繊維芽細胞等)かを明らかにする。加えて、筋細胞由来の再生芽細胞に着目し、脱分化現象の指標となる多能性因子の発現があるかないかについて、幼生期と成体を比較する。これらの結果をアホロートル(幼形成熟型)による先行研究と比較し、成体イモリの肢再生芽細胞の由来と分化能に関して考察を与える。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費の端数として生じた。小額なため翌年度分と合わせて必要な試薬等の購入に充てた方が有効であると判断した。 トランスジェニックイモリの作製と移植後の系譜解析にかかる物品(実験動物、遺伝子導入試薬、抗体。ディスポ器具)に使用する。
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