ES細胞は、無限の自己複製能と、様々な細胞系譜へ分化するための未分化性という、2つの特徴を有す。ES細胞を再生医療へ応用するには、この2つの特性を制御する遺伝子群についての詳細な解析が必要である。本研究では、近年報告されたハプロイドのマウスES細胞に対して、我々が長年に渡って用いて来た遺伝子トラップ法を適用することで、ES細胞の自己複製と未分化性維持に必須な遺伝子の網羅的スクリーニング法の開発を試みた。 (1)ハプロイドES細胞の培養条件:ハプロイドES細胞は培養過程で自然にディプロイド化するため、細胞を継代する過程で、FACS解析で核型をモニターしながら、定期的にハプロイド細胞をHoechst33342で染色し、ソーティングする必要がある。染色による細胞毒性を最小限に抑え、かつ、純度の高いハプロイドES細胞を回収するための条件を設定した。 (2)遺伝子トラップベクターの開発:Cre依存的に遺伝子トラップのユニットが反転して遺伝子を破壊できるベクターを作製した。反転が十分になされるためのCreの活性化条件を設定した。遺伝子トラップベクターを効率的にゲノムへ挿入するためのトランスフェクションの条件も設定した。 (3)FACSにより回収したハプロイドES細胞へ遺伝子トラップベクターを導入した。ベクター挿入部位を決定し、かつ、挿入部位の遺伝子型をPCRで解析することにより、野生型のアレルが消滅していることを証明した。
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