神経冠由来のメラニン色素細胞であるメラノサイトは移動性の高い細胞で、様々な組織・器官に定着する。これらの領域中で、内耳血管条と眼球の外側に位置して眼球を取り巻く脈絡膜には多くのメラノサイトが集積し、発達した脈管系の周囲に位置取りする。本課題は、この血管系の構造構築と維持に、メラノサイトが必須か否か、マウス突然変異体を用いて、両領域の形態を比較解析することを第一義的な目的とした。さらには脈管形成にメラノサイトが及ぼす効果を培養下で再現できるか否か、その培養法の開発も試みることにした。 Black-eyed whiteと呼ばれるように、Mitfmi-bwホモ接合体は黒眼白毛色を示し、メラノサイトの分化が認められない。この変異体と野生型の前記の両領域の形態観察から始めた。パラフィン切片上では、メラノサイトが無いと血管網の発達(配向)が充分ではない観察像が得られた。次に高次構造をより詳しくとらえるために、マイクロCTによって当該領域の観察を行うことにしたが、通常の造影剤では満足な結果が得られなかったため、置換型の物を使用し、固化させて後、この組織を摘出して観察することにした。改良すべき点が2点あった。それは当該造影剤の注入速度と容量である。このことに気づいたのは多くのサンプルでの試行錯誤の後であったので、今後も解析を継続する予定である。しかし通常の方法では得られない構築像がえられ、やはり変異体の血管網は未発達であることを強く示唆する結果を得た。血管条の観察はさらに困難であり、ようやく周囲の骨を脱灰したサンプルにおいて血管網の高次構造再構築像が得られるようになったところである。これも継続課題として解析したい。また血管培養系は、タイプの異なるコラーゲンを用いて培養条件の検討を昨年度に引き続き行っているところである。
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