研究課題
本研究では、国立成育医療研究センターで実施している小児生体肝移植手術の際に得られる摘出肝組織より肝細胞を分離・保存し、これら肝細胞を肝障害免疫不全マウスに移植し、病態肝由来のヒト肝細胞を持つヒト肝型マウスの作成を試みる。本年度は、ドナー9検体、胆道閉鎖症14検体等より組織保存・細胞単離を行い、合計33検体より肝組織の保存・肝細胞単離を行った。単離した肝細胞を肝傷害重度免疫不全マウスであるuPA-NOGマウスまたはTK-NOGマウスへ移植し、特に本年度は、胆道閉鎖症より単離した肝細胞の移植を中心に検討した。胆道閉鎖症肝は肝線維化が進行し硬変している場合が多いが、このような検体からもコラゲナーゼ灌流法により肝組織を消化し、肝細胞の単離を行うことに成功した。得られた肝細胞はuPA-NOGマウスまたはTK-NOGマウスへ移植することにより、マウス肝内への生着が確認された。生着したヒト肝細胞はヒトアルブミン陽性像を示し、薬物代謝酵素の発現も認められ、また細胞増殖を示すKi-67発現も散見された。これら結果から、胆道閉鎖症においても肝細胞は正常機能を有していることが示された。また、胆道閉鎖症由来肝細胞を移植されたマウスにおいては、胆道閉鎖症様症状の所見は得られなかった。この結果は、胆道閉鎖症の病因に肝細胞が関与していないことを示すとともに、胆道閉鎖症において、早期の肝門部空腸吻合手術(葛西手術)の施行と肝内病変進行の抑制が胆道閉鎖症の予後を良好にする上で重要であることを示している。本研究により、各種肝疾患由来ヒト肝細胞を用いたヒト肝型マウスの作成が可能であることが示され、また、ヒト肝細胞の由来する疾患の表現型を示すかどうかを検討することにより、疾患モデルマウスとしての有効性の検証とともに、対象疾患における細胞障害等の病態検証が可能であることが示された。
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