研究課題
ストレスファイバーの張力の発生源である非筋II型ミオシンに結合して収縮状態を調節するミオシン軽鎖の変異体を用いて張力ホメオスタシスに及ぼすミオシン軽鎖のターンオーバーの影響を調べた。この変異体は研究協力者からの提供を受けて利用した。非筋II型ミオシンによる収縮はATP加水分解によって達成される。まず、ATP加水分解能を調節するミオシン軽鎖の擬似恒常リン酸化状態(活性化状態)やリン酸化抑制状態(不活化状態)を起こした変異体のプラスミドをヒト骨肉腫U2OS細胞に導入した。共焦点レーザー顕微鏡を用いてFRAP(Fluorescence recovery after photo-bleaching)実験を行い、蛍光タンパク質によって標識したこれらのミオシン軽鎖の変異体のターンオーバー速度を調べた。その結果、変異体ごとに大きな差が現れることが明らかとなった。また同細胞に繰り返し伸展刺激を与えると、ここでも変異体ごとに特有な速さでストレスファイバーが脱重合することがわかった。ここまでの研究から、ストレスファイバーが張力ホメオスタシスを起こす上で、構成タンパク質のターンオーバー、および力学環境の変化に応じた脱重合の両者が必要不可欠なメカニズムであることが明らかにされた。現在は、ミオシン軽鎖だけでなく、直接張力の発生に関わる非筋II型ミオシンも蛍光標識し、同様なFRAP実験に着手している。本実験では特に張力ホメオスタシスを実現する際のミオシン軽鎖と非筋II型ミオシンのダイナミクスに焦点を置いている。
2: おおむね順調に進展している
細胞内のストレスファイバーを対象とした実験は順調に進んでいる。一方、細胞から単離したin vitroにおけるストレスファイバーについては、張力ホメオスタシスとの関連がまだ十分に明らかにできていない。しかし、単離したストレスファイバーの機能と構成タンパク質は前年度までの研究で詳細に調べており、この技術をもとに現在実験に取り組んでいる。
当初の予定の実験を速やかに遂行する予定である。
研究代表者は平成25年4月に東北大学から名古屋工業大学へ異動した。その前後における引っ越し作業と異動後の実験室の立ち上げに研究計画に一部遅れが生じ、そのため次年度使用額が生じた。次年度使用額は実験消耗品として利用し、当初予定していた実験を実施する予定である。
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Biotechnology Letters
巻: 36 ページ: 507-513
10.1007/s10529-013-1391-3
巻: 36 ページ: 391-396
10.1007/s10529-013-1368-2
http://mbl.web.nitech.ac.jp/index.html