研究課題/領域番号 |
24650254
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田川 陽一 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (70262079)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 再生医学 / 細胞・組織 / バイオテクノロジー / バイオリアクター / 生物・生体工学 / 生体材料 / マイクロデバイス |
研究概要 |
マウスES/iPS細胞から、心筋、内皮細胞ネットワークおよび肝細胞の共存した肝組織、さらにαおよびβ細胞の共存した膵島組織という心・肝・膵が一体化したシステム(iHLP:in vitro Heart, Liver, Pancreas)への分化誘導に成功した。このiHLPにインスリンやグルカゴンを添加したところ、培地中のグルコースレベルを増減することができ、iHLPは血糖値調節in vitroモデルになりうることが示せた。iHLPにアンモニアを添加すると尿素が合成されるが、そこにオルニチンを加えることによりさらに尿素合成が促進されることが確認できた。 アンモニアやアルコール添加により培地中のGOTやGPT活性レベルのにより定量に肝細胞の細胞死レベルを計測できるようになり、このiHLPの系にオルニチンを添加したところ、肝細胞死が抑制されることもわかった。 ポリジメチルシロキサン(PDMS)によるマイクロ培養装置(培地の流路付)を作製し、iHLPを培養することができた。本研究の計画当初は、心・肝・膵・神経の4つを独立した培養槽で培地流路で連結することを考えていたが、iHLPでは少なくとも4つのうち3つが共存しているので、現時点では一つの培養槽を用いたチップで進めていくことにした。培地は閉じた循環系ではなく、開いた常に新しい培地の供給になっているため、良好な培養環境が維持され、通常のバッチ培養に比べて特に肝機能が高いことが示された。 以上のことから、マウスES/iPS細胞由来iHLPは、本研究が目指す最小哺乳類in vitroシステムに近づいたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスES/iPS細胞から心・肝・膵の3つの組織を同時に分化誘導し、これらをPDMSによるマイクロデバイス中で培養、一部の機能を調べることに成功した。つまり、平成24年度の研究実施計画に神経チップとマウス個体の各臓器の評価系以外は、ほぼ予定通りに達成できた。ただし、ポジティブコントロールとなるマウス個体の各臓器の評価系の確率は非常に難しいことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
心・肝・膵の共存系では、細胞のバランスの調節が難しいので実際の個体における各細胞種の細胞数の割合とは異なっている。したがって、4つの独立した組織チップによりそれぞれの組織のレベルを調節した連結も検討すべきと考えており、各組織チップの作製を取り組む。 また、神経細胞チップにまだ取り組んでいないので、今年度の前半において、神経細胞株による神経組織チップの作製と神経細胞の活性測定系を確立する。後半では、iHLPと神経チップの組み合わせ、または、4つの組織チップの組み合わせにおける代謝系を調べ、実際の個体におけるホメオスタシスと比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「該当なし」
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