研究課題/領域番号 |
24650255
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森田 康之 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90380534)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 細胞培養 / 増殖・分化 / 間葉系幹細胞 / 機械的伸縮刺激 / 細胞外マトリックス / 再生医学 / 機械材料・材料力学 |
研究概要 |
歯根膜組織を有した歯科インプラント開発を長期的最終目標に据え,本申請課題では短期的目標として線維性軟組織のin-vitroでの組織再生のための系統的な分化・組織再生メカニズムの解明を目的としている.具体的には,力学的刺激に対する間葉系幹細胞の分化条件の定量的評価,および力学的刺激に対する高効率的な組織再生の最適条件の探索に従事する.当該年度の計画として,「1.細胞分化と機械的伸縮ひずみの相関性の解明」および「2.パターニング培養による細胞のたんぱく質発現の制御」を掲げていた. 1に関しては,細胞分化に対する力学的刺激の受容性に関して非常に興味深い結果を得た.すなわち,繰返し伸縮刺激を受ける間葉系幹細胞において,線維性組織の成分の大部分を占めるType I Collagenの発現は,広範なひずみ値を受容した.一方,腱組織に特異なタンパク質であるTenascin Cの発現は,狭窄なひずみ値しか許容しなかった.これは,力学的刺激に対する幹細胞の分化メカニズムを解明する大きな手掛かりとなると考えており,今後も継続的に研究を行っていく予定である. 2に関しては,間葉系幹細胞に力学的伸縮刺激を加える際,拒絶反応として自発的な配向挙動を示すが,それを抑制するよう細胞接着タンパク質にパターニングを施したサンプルのほうが,細胞の自発的な配向挙動を抑制しないサンプルに比べて,Type I Collagenの発現量が格段に上昇するという結果を得た.これは,細胞の分化に対してどのような力学的刺激が効果的であるかという議論において一定の結論を与えるものであると考えられる.すなわち,間葉系間細胞を楕円形と近似した場合,長軸方向の伸縮負荷が分化に対して非常に重要な因子となっていることを示唆している.しかしながら,データ量が十分でないため,今後も究明を続ける予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記したが,当初の研究実施計画の通り進捗していると言える.しかしながら,当該年度計画した研究内容に対して非常に興味深い結果が得られている.したがって,次年度研究実施計画で示した内容を遂行するとともに,並行して当該年度の研究内容を継続して実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
上述したようにH24年度の研究内容(1,2)を継続するとともに,次年度の研究実施計画(下記の3,4)に沿って研究を進めていく予定である. 3.パターニング培養による高次構造を有する組織再生の試み 申請者はこれまでの研究により,機械的伸縮刺激に対する間葉系幹細胞のたんぱく質発現量とECM組織の構造化には,異なるひずみ依存性を有することを示した.H25年度は,H24年度に行ったパターニングの研究において,タンパク質発現量の観点から,高次構造すなわち組織化の観点で研究を行う予定である. 4.三次元培養による上記技術の高度化 これまで述べた研究内容は二次元培養下で行われる研究であり,実際に細胞がさらされる環境とは異なる.そこで,足場を三次元構造体とした三次元培養への応用を行う.その三次元培養において眼前の問題となる,細胞の運動挙動およびECMに作用する力学場の定量評価で必要となるDVC(Digital Volume Correlation)法と呼ばれるプログラムの開発に着手し,細胞周囲の力学的なMicroenvironmentの計測を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
幹細胞,細胞培養用試薬,増殖・分化遺伝子解析用試薬,蛍光観察用抗体試薬など,全般的に消耗品費として使用する予定である.
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