研究課題
研究初年度は,力学刺激負荷中の細胞張力分布・細胞分裂過程のその場計測系の確立に着手した.シリコーンラバー製のマイクロピラー基板上で細胞を培養し,個々のピラーの変形量から細胞の接着部位での張力を正確に計測する技術を確立し,このピラー基板ごと単軸引張や圧縮を加えながら細胞分裂過程での細胞内張力分布を精密に計測できるようになった.また,単軸引張だけでなく,シリコーンラバー基板上で細胞を培養しながら,顕微鏡観察下で基板を円筒(インデンターリング)に押し付けて全方向に均等に引張や圧縮を負荷する等二軸引張装置を試作した.この装置のインデンターリングの断面形状を真円ではなく楕円等にすることによって,単軸引張を負荷することも可能となった.リングを回転させることで楕円の長軸方向を変更し,任意の方向に引張ひずみを負荷できる機構を開発した.さらに,これまでに開発した磁気駆動式ピラーを用い,局所的に磁場を形成できる磁気ピンセットを作製して外部から磁場を負荷し,細胞の特定の焦点接着斑に直接変形を加え,その後の細胞分裂を詳細に観察できる実験系も確立した.これらの成果は,日本機械学会 第22回バイオフロンティア講演会(2012.10.5-6,弘前)やBiomedical Engineering Society 2012 Annual Fall Meeting 2012(2012. 10. 24-27,Georgia World Congress Center Atlanta, Georgia, USA)などで発表するとともに,現在,論文投稿準備中である.
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り,細胞の張力分布を計測しながら,細胞に引張や圧縮ひずみを負荷し,その際の細胞分裂過程を顕微鏡下で詳細に計測できる実験系を確立できた.
平成24年度に確立予定の手法を用いて,細胞分裂過程での細胞形態と内部構造の変化を観察しながら,細胞接着部位での張力分布の変化を詳しく調べる.基質に接着後の細胞には,「①伸展して広がる段階」と「②その後,倍加のためのタンパク合成・遺伝子複製を進め細胞分裂に備える段階」があると考えられる.また,細胞分裂の方向に関しては,細胞内の張力分布に依存し,アクチンフィラメントと核の機械的結合なども考えられることから,細胞骨格の配向にも大きく依存すると考えられる.よって①,②の過程において,細胞骨格の分布と核の向き,細胞内張力分布の変化を詳しく調べ,その後の分裂方向との関連性を見極める.このようにして得られたデータに基づき,細胞接着領域の大きさ・形状による細胞分裂頻度の違いや,細胞分裂前の①,②の段階における張力分布を考慮し,細胞の接着部位全体あるいは個々の接着部位に変形を加え,細胞内張力分布の操作する.各段階で張力を一方向にそろえたり,あるいは特定方向の張力を緩めるなどして,細胞容積・DNA の倍加を促進/遅延させたりしてみる.さらに,有糸分裂や細胞分裂方向の制御を試み,特定の方向に細胞を増殖できるかどうか検討する.
該当なし
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Analytical Sciences
巻: 29 ページ: 205-211
10.2116/analsci.29.205
American Journal of Physiology, Cell Physiology
巻: 302 ページ: 1469-1478
ajpcell.00155.2011v1 302/10/C1469
Journal of Biomechanical Science and Engineering
巻: 7 ページ: 130-140
doi:10.1299/jbse.7.130
Proceedings of the 2012 Summer Bioengineering Conference
巻: in CD-ROM, SBC2012-80213.pdf ページ: -
http://biomech.web.nitech.ac.jp/top.html