研究概要 |
本年度は,昨年度構築した力学刺激負荷中の細胞分裂過程のその場計測システムを用いて,特にヒト子宮頸がん由来細胞株(HeLa細胞)を対象に,有糸分裂,細胞質分裂の過程にて引張ひずみを負荷したときの,その後の分裂過程に与える影響を調べた.有糸分裂開始直前に,その染色体赤道面に垂直方向に10%程の引張りひずみを負荷すると,染色体集団が回転し,当初の向きと直行方向に有糸分裂が進み,やや遅れて細胞質分裂に至るという興味深い結果が得られた.一方で,有糸分裂が完了した細胞に対して同様の引張りひずみを加えても,細胞分裂の方向に変化が生じないという結果が得られた.これによって,ひずみ負荷のタイミングを考慮することで,細胞分裂の方向や頻度を制御できる可能性が得られた. さらに,微細加工技術で作成したマイクロピラーや側面に凹凸を持つマイクロ流路を用い,細胞核に局所的に変形を加えることができる基板を試作した.これらを用いて血管平滑筋細胞の核の形態を拘束しながら培養をすると,血清含有培地中においても,細胞の分裂が劇的に抑制されることが分かった.これらの成果の一部は,人工臓器学会誌の依頼解説(-最近の進歩- 細胞のバイオメカニクス:組織再生に向けたメカノトランスダクションの理解とその制御,人工臓器 42-3, 205-208,2013)として紹介するとともに,現在,データをまとめて国際誌に論文投稿準備中である.
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