研究課題/領域番号 |
24650259
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
原田 直純 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), リサーチアソシエイト (40520961)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | デリバリーシステム |
研究概要 |
デリバリーシステム「疎水化多糖ナノゲル」がどのようにリンパ節選択的に物質を輸送するのか、マウスを用いたin vivo 系で解析した。輸送が細胞依存性か非依存性かを知るため、2種類の蛍光標識ペプチドを用意し、それぞれの疎水化多糖ナノゲル複合体を離れた部位、ただし従属リンパ節は同じとなる部位に皮下投与した。この系では、細胞依存性に輸送される物質は従属リンパ節内で異なる抗原提示細胞に含まれ、細胞非依存性に輸送される物質は同じ抗原提示細胞に含まれる形で検出される。結果として、疎水化多糖ナノゲル・ペプチド複合体の場合は後者のケースが認められ、細胞非依存性輸送が関わることが明らかになった。細胞非依存性輸送を妨げるような電荷や粒子径の疎水化多糖ナノゲルでは、リンパ節への輸送能力が低下した。 疎水化多糖ナノゲルがペプチドを送達する標的細胞を同様の手法で調べたところ、従属リンパ節内のマクロファージに効率良く取り込まれることを見出した。マクロファージが疎水化多糖ナノゲルを用いるワクチンでどのような働きを担っているかを知るため、ワクチン投与マウスの従属リンパ節からマクロファージと樹状細胞を回収し抗原提示活性を評価したところ、マクロファージだけに活性が認められた。また、薬剤投与によりマクロファージを除去したマウスでは、ワクチン抗原に特異的な免疫誘導が顕著に減弱した。 以上の結果より、(1)疎水化多糖ナノゲルは細胞非依存性輸送により物質をリンパ節内に送達すること、(2)標的細胞は樹状細胞ではなくマクロファージであること、(3)ワクチンにおいてマクロファージは有用な抗原提示細胞となり得る可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した方法とは異なるが、デリバリーシステム「疎水化多糖ナノゲル」の輸送機構を計画通りに明らかにすることに成功した。 さらに、輸送の標的細胞が予想していた樹状細胞と異なり、マクロファージであることを新たに見出した。疎水化多糖ナノゲルを用いたワクチンの薬理効果にマクロファージが必要であることなど、免疫学・ワクチン学的に新しい知見を見出した。 以上の情報は、平成25年度に予定している「疎水化多糖ナノゲル」を用いた新しいがん治療戦略の設計に非常に有用である。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載の計画の通り、平成25年度は前年度に得た知見を基に、リンパ節指向性デリバリーシステム「疎水化多糖ナノゲル」を応用した腫瘍局所リンパ節環境の人為的制御によるがん治療技術の創出を進める。 腫瘍微小環境や腫瘍従属リンパ節中には、がんに対する免疫応答を抑制する骨髄系の免疫細胞が存在し、一部の低分子化合物や免疫刺激剤(TLRアジュバントなど)が、抑制性細胞の働きを抑えられることが知られている。これら薬剤と疎水化多糖ナノゲルの複合体の作製を検討したのち、完成した薬剤を腫瘍付近に投与し、腫瘍周辺の免疫的環境の変化と抗がん効果の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:40万円 旅費:30万円 人件費・謝金:45万円 その他:5万円 物品費は、主に薬剤や免疫学試薬の購入に充てる。旅費は成果発表のための学会参加に用いる。その他として、論文投稿費用を計上した。
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