研究課題
これまでに疎水化多糖ナノゲルが細胞非依存性輸送により物質をリンパ節内に輸送すること、輸送先は抗原提示活性の高い特定のマクロファージであることを見出した。本年度は、この知見に基づく新規がん治療法の創製を試みた。具体的には腫瘍所属リンパ節内のマクロファージに活性化物質、例えばCpGオリゴヌクレオチド(CpG ODN)等のToll様受容体のリガンドなどを選択的に送達することを目的とし、疎水化多糖ナノゲルにCpGオリゴヌクレオチドを包埋する方法を検討した。疎水化多糖ナノゲルに包埋される物質は、ある程度の疎水性を有する必要がある。CpG ODNは疎水性が低いため、コレステロール基などで修飾することで疎水性を付与することとした。これを疎水化多糖ナノゲルと混合し複合体化反応を行った後に、マウスに皮下投与して従属リンパ節内のマクロファージの活性化を評価した。その結果、疎水化多糖ナノゲルと複合体化したか否かに関わらず、CpG ODNをコレステロール基修飾するだけで、マクロファージ活性化能が劇的に向上した。原因として、疎水性を付与したCpGオリゴヌクレオチドが両親媒性となり、ミセル形成により自発的にナノ粒子化した可能性があると考えた。そこで現在、ミセル形成防止のために疎水性を抑えた官能基をCpG ODNに付与する試みを継続している。一方で、疎水化多糖ナノゲルがリンパ節内マクロファージ選択的に物質輸送することを利用し、疎水性多糖ナノゲルを用いたリンパ節内マクロファージ指向性がんワクチンを設計し、従来の樹状細胞依存性がんワクチンと性能比較した。その結果、Toll様受容体リガンドをアジュバントとして併用すると、疎水性多糖ナノゲルがんワクチンは従来型ワクチンより格段に優れた免疫誘導能力と抗がん効果を示した。今後は、この疎水化多糖ナノゲルを用いた高性能がんワクチンの臨床応用が期待される。
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J Transl Med.
巻: 11 ページ: 246
10.1186/1479-5876-11-246.