研究課題/領域番号 |
24650265
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 健志 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (30249560)
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研究分担者 |
世良 俊博 大阪大学, 学内共同利用施設等, 講師 (40373526)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 全身性微振動 / ランダム性 / アナボリック効果 / 骨微細構造 |
研究概要 |
極めて小さい振幅かつ高周波の全身性微振動によるアナボリック効果が注目されている.しかし,振動の不規則性の影響は明らかではない.本研究では全身性微振動負荷の不規則性の影響を実験的に検討するために,任意の振動パターンで全身性微振動を負荷することができるマウスを対象にしたシステムを構築し,予備実験を行った. 【システム構築】全身性ランダム微振動負荷システムは,振動発生器,電力増幅器,およびファンクション・ジェネレータからなる動電型振動試験装置に,レーザー変位センサーを利用したフィードフォワード制御を付与することにより構築した.ホワイトノイズやピンクノイズ等,任意の振動パターンでケージ内のマウスに全身性の微振動を負荷することができる.振動台に設置したマウス収納用のケージは8匹まで個別に収容可能とした. 予備実験では,坐骨神経を切断した廃用後肢モデルマウスをコントロール群(C),正弦波負荷群(S),ホワイトノイズ群(W),正弦波+ホワイトノイズ群(S+W)の4グループに分け,Sには振幅83um,周波数30Hzの正弦振動,Wには周波数帯域0-100Hzのホワイトノイズ(振幅[rms]= 8.3um),S+WにはSとWに負荷した振動の重畳振動を負荷した.3群とも一日15分間の振動負荷を与え,これを毎日3週間行った.Cはケージに入れるのみで振動は負荷しなかった.骨形態計測にマイクロCTを利用し,廃用側および健側脛骨の近位成長板から遠位方向(0.7-1.5mm)の二次海綿骨を含む部位を解析領域とし,骨構造パラメータを算出した.Cでは健側に比べ廃用側で著しい骨量低下が認められ,Sでは僅かに低下が抑えられる傾向を示すのみであった.WおよびS+Wでは廃用側の骨量低下は認められたが,Cで観察されるほどの健側との差は認められず,不規則性振動がWBV効果の増強に有効であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験システムの構築は計画通り進み,予備実験でも今後の実験計画の参考となる基礎データが取得できた.
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今後の研究の推進方策 |
全身性微振動の効果はその振幅や加速度(周波数)にも依存することから,異なる振幅の擬似ホワイトノイズ振動やピンクノイズ,周波数変調パターンの振動など様々な不規則パターンの微振動を後肢廃用マウスに与える実験を行う.また,統計解析の精度を上げるために試料数を増やして実験を行う.なお,計画していたインビボCT計測であるが,この計測で検出できるほどの全身性微振動の効果は期待できないため,より高精度・高感度な計測手法(放射光CT計測,多重骨標識を利用した骨形態計測など)を中心に実験を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
不規則な微振動の影響をより詳細に検討するために,周波数のみに不規則性を持つ振動,振幅のみに不規則性を持つ振動など,種々の不規則パターンで動物実験を行う.脛骨近位部の二次海綿骨を対象に,マイクロCT計測に加えて,カルセイン,テトラサイクリンなどの骨標識剤を利用したより感度の高い骨形態計測も行う.また,骨形成と関連が深い血管の関与について検討するため,ジルコニア成型剤を充填した血管鋳型を作製し,放射光施設SPring-8において骨形態とともにこれを観察する. 実験遂行に関する費用は計70万円,その内訳はマウス下肢廃用モデル(16万円),マウス飼料等(4万円),実験用試薬等(10万円),観察組織作製費用(30万円),SPring-8利用料等(10万円)である.また,研究発表のための学会出張旅費(10万円),その他,論文関連費用(10万円)の使用を計画している.
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