無蛍光低分子化合物に結合して蛍光を発するFAPについて、小胞体内に発現してタグとしての検討を行った。これが特に光耐性に優れていることは再度確認し、昨年度に、懸念があった拡散の異常性について原因を調べたところ、市販されている低分子化合物は、所定の濃度で小胞体の構造異常を引き起こすことが明らかになり、この目的での使用は断念した。 そこで酸化的環境で使用できる小さな蛍光タグとして、FMN依存的な蛍光蛋白PhiLOV2.1について、通常の蛍光イメージングに使用できるレベルへの改変をさらに進めた。徹底的な変異を加えて蛍光特性を改善する変異を網羅的に調べていったところ、最終的に、分泌系で修飾を受ける部位を持たず、分子輝度と光耐性を共に改善して、実用に耐えるレベルの特性を持つ蛍光タグを作成することができた。 その他、酸化的環境でinertな各種の蛍光蛋白の作成をさらに進める一環として、Photoconversion-induced FRETとして、光変換がランダムに起きる事を利用して小胞体内での分子のオリゴマー状態を調べる方法の蛍光寿命測定での確認を行った。その結果、分子が2量体以上である場合には、光変換依存的なFRETが観測され、酸化的環境における解析で使用可能なことが示された。 また、近赤外の蛍光蛋白についても外界で影響を受ける部位の除去の検討を行ったが、実用的な蛍光強度を持つiRFP670においては6個のCYSのうち、一つのCYSを他のアミノ酸で置き換えることができなかった。立体構造から推定した近隣部位の飽和変異も行ったものの、現時点で、この問題は解決できておらず、課題として残った。
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