研究概要 |
本年度は主として以下の二項目に関する実験検討を行った。 (1)抗がん剤耐性獲得HeLa細胞の作製: シスプラチン(CDDP)およびパクリタキセル(TXL)に対して耐性を有するHeLa細胞を、それぞれの抗がん剤の濃度を段階的に上昇させるTakaraらの方法にしたがって確立した。抗がん剤に対する耐性の評価は、XTT assayによって増殖阻害曲線を作成、その50%増殖阻害率(IC50)を通常培養されたHeLa細胞と比較することで行った。その結果、CDDP耐性HeLa細胞のIC50は、通常培養されたHeLa細胞のそれの2.1倍以上の濃度を、またTXL耐性HeLa細胞のIC50は、10.2倍以上の濃度を示し、Takaraらの確立した各耐性HeLa細胞と同等の耐性を確認することができた。 (2)光感受性色素およびレーザ光照射条件の検討(PDT条件の検討): 著しい細胞死を誘導することのないよう、連続波レーザ光を励起光とする下記PDT条件に対するHeLa細胞の細胞生存力を評価した。①光感受性色素:Photofrin(10 ug/ml)、②光感受性色素の接触条件:血清存在下にて15分間、③励起光源:赤色半導体レーザ(波長637 nm)、④パワー密度:5mW/cm2、⑤総光照射量:0.5J, 1.0J, 3.0J, 5.0J/cm2。その結果、総光照射量3J/cm2以下において、その細胞生存力は95%以上を示し、また5J/cm2適用時においても、90%以上の細胞生存力が確保されていた。これらの結果から、本研究における抗がん剤耐性獲得HeLa細胞の細胞傷害効果は、上記①から④と3J/cm2以下の総光照射量を適用することで、PDTによる細胞死誘導の影響を考慮せずに評価できるものと考えた。
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