本年度は昨年確立したシスプラチン(以下CDDP)およびパクリタキセル(以下TXL)耐性HeLa細胞を用い、特にPDTによる多剤排出性たんぱく質の機能損傷効果の有無を評価した。評価にあたっては、PDTおよび各種抗がん剤暴露後におけるHeLa細胞の増殖活性を指標として行った。 本研究では、PDTによるブレオマイシンの細胞内導入に関する実験検討において採用したPDT実施条件を適用した。本条件においては、PDT自身の細胞傷害効果はほとんど考慮する必要はなく、抗がん剤のみの細胞傷害効果を評価することができる。各抗がん剤の適用濃度は、それぞれのIC50値を用いることとした。 CDDP耐性HeLa細胞に10 uMの(≒IC50値)CDDPを負荷し、PDTを実施した細胞群の生存力は、通常のHeLa細胞に10 uMのCDDPを負荷し、PDTを実施した細胞群の生存力とほぼ同等に低下する傾向が見られ、CDDP耐性HeLa細胞の耐性が低減されることが示された。このことはPDTが、CDDPの解毒化に関与するグルタチオンやメタロチオネイン等の金属結合性のタンパク質あるいはペプチドの結合能を低下させ、細胞内におけるCDDPの遊離を促す可能性を示唆している。 一方、TXL耐性HeLa細胞に10 nM(≒IC50値)のTXLを負荷し、PDTを実施した細胞群の生存力は、通常のHeLa細胞に10 nMのTXLを負荷し、PDTを実施した細胞群の生存力よりも、その照射量に関わらず、PDT非適用のHeLa細胞と同じレベルで高く維持されるという結果が得られた。このことは、TXL耐性HeLa細胞は、TXLのみではなく、光増感剤も細胞外に排出してしまい、細胞膜上でのPDT効果が現れなかったことを意味している。 PDTによる抗がん剤耐性細胞の耐性低減は、抗がん剤の種類、すなわち耐性メカニズムに依存するものと考えられた。
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