研究課題/領域番号 |
24650271
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川下 将一 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (70314234)
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研究分担者 |
宮崎 敏樹 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 准教授 (20324973)
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50292222)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | チタン / 光触媒 / 可視光 / 窒素 / 硫黄 / 抗菌性 / 生体活性 / アパタイト |
研究概要 |
本研究では、チタン(Ti)金属をNaOH処理後、アンモニア水(NH4OH)あるいは硝酸(HNO3)処理し、さらに加熱処理することにより、同金属表面に窒素ドープTiO2層を形成させることを試み、得られた試料の表面構造、擬似体液(SBF)中でのアパタイト形成能および可視光下での光触媒特性(メチレンブルー(MB)分解特性)を調べた。 NaOH-NH4OH-加熱処理により、Ti金属表面にNaOH-加熱処理の場合と同様の微細な網目構造が形成されたが、NaOH-HNO3-TF-XRD測定によれば、NaOH-NH4OH-加熱処理の場合には、表面にアナターゼ型TiO2と少量のルチル型TiO2が形成され、NaOH-HNO3-加熱処理の場合には、主にルチル型TiO2が形成された。さらに、XPS測定によれば、NaOH-NH4OH-加熱処理試料では、0.4 atomic%のNと1.4 atomic%のNaが検出され、NaOH-HNO3-加熱処理試料では、1.7 atomic%のNが検出されたが、Naは検出されなかった。 これら処理を施した試料をSBFに浸漬したところ、NaOH-NH4OH-加熱処理試料はアパタイトを形成したが、NaOH-HNO3-加熱処理試料はアパタイトを形成しなかった。NaOH-HNO3-加熱処理試料がアパタイトを形成しなかったのは、NaOH処理によって形成された表面層が高濃度のHNO3処理によって溶解したためと考えられる。また、NaOH-NH4OH-加熱処理試料は、未処理あるいはNaOH-加熱処理試料に比べ、やや多量のMBを分解した。以上より、Ti金属をNaOH処理後、NH4OHで処理し、さらに加熱処理すれば、同金属にアパタイト形成能と可視光下での光触媒活性を付与させ得ることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究により、Ti金属をNaOH処理後、NH4OHで処理し、さらに加熱処理すれば、同金属にアパタイト形成能と可視光下での光触媒活性を付与させ得ることが明らかとなった。また、この成果を学会にて発表し、特許を出願した。さらに、NaOH-H2SO4-加熱処理Ti金属に関しても、基礎的な知見が得られた。従って、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、NaOH-NH4OH-加熱処理Ti金属については、その最適条件を明らかにし、NaOH-H2SO4-加熱処理したTi金属については、そのアパタイト形成能および可視光下でのメチレンブルー分解特性を調べる。また、良好なメチレンブルー分解特性を示したTi金属について、抗菌性試験および細胞適合性評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主にTi基板、薬品類、実験器具類として使用する。これは、Ti基板の最適な処理条件を追究し、抗菌性試験および細胞適合性試験を円滑に遂行するために必要である。また、実験補助員の人件費としても使用する。さらに、本研究の成果を国内外の学会にて発表するための旅費や、論文の英文校正費としても使用する。
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