研究概要 |
昨年度に引き続き,チタン合金90Ti-6Al-4V(以下Ti64合金)中のAl成分が, Ti64合金と骨組織との直接結合を妨げる効果を抑制するため,岡山大学と産業総合技術研究所との包括研究協定の枠組みの中で,同中部センター・テイラードリキッド集積グループの開発した,液相堆積(LPD)の処方を適用し,処理条件(処理溶液濃度と処理温度)と小久保の擬似体液(SBF)中でのアパタイト析出に関し,詳細に検討を重ねた。また,その過程で,第2の手法に思い当たりその実験も進めた。すなわち電界紡糸でTi64合金表面にシリカのナノチューブ(NT)またはナノ繊維(NF),あるいは紡糸繊維中にアパタイトを析出させる解決方法である。 LPD処理したTi64合金(LPD-Ti64)試料と,500°Cまたは700°Cで1時間加熱処理(HTx00-Ti64; x=5, 7)試料とを,0.3mmの隙間をもって固定する,GRAPE®型対面配置したところ,LPD-Ti64にアパタイトの析出を認めた。さらに,電界紡糸ポリビニルアルコール(PVA)繊維を,酸性または塩基性触媒下で作成したシリカコロイド溶液中に浸漬した所,シリカNTおよびNFがそれぞれ作成できた。さらに,カルシウムおよびリン酸イオンを混入したPVA溶液を電界紡糸した後,それをアンモニア蒸気に曝し, PVA 繊維内にアパタイト結晶を析出させることに成功した。また,同紡糸繊維をオルトケイ酸テトラエチル蒸気に曝すことにより,アパタイト析出量を格段に増加させた。
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