研究課題
本年度は主として粘液バリヤ系の評価物質であると考えられるムチン類の代表としてのクラゲ由来ムチンを引き続き探査することに重きを置いた。特に今年度はクラゲ由来ムチン(Q-mucin)の水溶液に現れる界面活性能力を明らかにするため、この水溶液と従来からの細胞外マトリックス基準物質であるヒアルロン酸(HA)の水溶液について比較した。すなわち、その目的で、界面活性能力が最も著しく現れる、表面張力測定および接触角測定を行った。これらの物質はどちらもポリアニオンであり、糖鎖を含んだ化合物Q-mucinは糖ペプチド高分子であり、疎水性の強いペプチド鎖を有し、近接する糖鎖とその解離基が0.2-0.5nm程度の距離にあるために、弱い界面活性能力を示すことを予想した。そこで、0mg/mLから5mg/mLまでの範囲でQ-mucinの水溶液を調整し、密度を精密測定した後に懸滴法により、その表面張力を測定した。その結果、濃度の増大に従って徐々に表面張力の低下する界面活性剤特有の挙動が見いだされた。最大濃度の5mg/mLのとき未精製Q-mucin水溶液の表面張力は74mN/mから64mN/mまで約13%低下した。これは高分子水溶液で見いだされた初めての例である。HA水溶液ではこのような挙動は全く見られなかった。精製ムチンでは解離基である硫酸基のいくつかが失われるため、表面張力の低下は、8%にとどまった。またいくつかのカバーガラス表面で親水性を変えて、接触角測定を行ったところ、濃度が高くなり溶液の粘度が高くなっても、接触角に大きな変化は見られなかった。このことはムチン水溶液が高い濃度でも濡れ性を維持し、粘膜表面を切れ目なく覆うことができることを意味し、バリヤ維持に界面活性能力が大きな貢献をしていると見られることが明らかになった。
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