研究課題/領域番号 |
24650283
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐藤 智典 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (00162454)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ペプチド / 糖鎖結合性ペプチド / 糖鎖認識 / リポソーム / 細胞透過性ペプチド / エンドサイトーシス / カベオラ |
研究概要 |
本研究では、糖脂質GM3に結合性を有するペプチドc01を提示させたリポソームやタンパク質の作製および細胞内へのデリバリーについて検討している。特に本年度はリポソームを用いた実験を行なった。卵黄ホスファチジルコリンおよびコレステロールから成るリポソームを作製した 。c01ペプチド提示リポソームのGM3に対する認識は表面プラズモン共鳴 (SPR) 法を用いて評価した。c01ペプチドの提示により、リポソームはGM3単分子膜に特異的に結合した。またリポソーム中のコレステロール含有率がc01提示リポソームの糖鎖認識に大きく影響していた。さらに、細胞との相互作用は共焦点レーザー顕微鏡 (CLSM) およびフローサイトメーター (FCM) により評価した。c01提示リポソーと細胞との相互作用のCLSM観察では、投与直後に形質膜表面に強い蛍光が観察され、投与1時間後から細胞内への取り込みが見られ、2時間以降では細胞内での強い蛍光が観察された 。細胞内への取り込みにエンドサイトーシスが寄与していることが示された。FCM解析では、c01ペプチドの配列依存的に効率良く細胞内に取り込まれることが示された。そこで、エンドサイトーシス阻害剤を用いてc01提示リポソームの細胞内取り込み経路の解析を行った。c01提示リポソームと細胞との相互作用を各種エンドサイトーシス阻害剤共存下で行なったところ、主にカベオラ介在性エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれていることが明らかとなった。c01修飾タンパク質でもカベオラ介在性エンドサイトーシスによる取り込みが見られており、c01ペプチドの特徴が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に計画していた実験の準備段階が順調に達成できたことから、申請計画書の2年度目の計画の一部を前倒しして実験を行った。研究実績の概要で述べたように、GM3結合性ペプチド提示リポソームを用いて、カベオラ介在型の細胞内への取り込みを確認することができた。これにより大きな目標を達成できる見通しが得られた。よって、当初の計画沿った研究を推進できることが確認された。リポソーム以外のDDSでも同様の成果が得られるかを今後確認して行くことで、2年目に計画していた実験を予定通り推進することで、全体計画の目標を達成できる可能性が高まった。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目の計画として提案していた通りに、ペプチドを修飾した各種バイオコンジュゲートを作製する。ペプチドの提示方法として、デンドリマー化もしくはタンデムリピート法を試みる。ペプチド提示リポソームでは、GM3結合性ペプチドに加えて、GM3とは異なる糖脂質であるGM1に結合するペプチドを用いる。初年度と同様の検討を行い、ペプチドの糖鎖認識性の違いによる細胞間相互作用の相違について検討する。特に核酸やタンパク質のデリバリーシステムを確立する。細胞との相互作用のメカニズム解析を複数のペプチドコンジュゲートで比較することで、細胞内輸送におけるガングリオシド結合性ペプチドの有用性を評価する。本申請者がこれまで開発してきた遺伝子複合体では、マクロピノサイトーシスにより細胞内に導入されていた。本申請研究では、ペプチドの認識を利用したラフト/カベオラ介在型の核酸のDDSを開発する。TATやレクチンとの比較解析を行い、本研究で開発するガングリオシド結合性ペプチドの特性を明らかにする。以上の様な実験により、糖脂質結合性ペプチドを利用した細胞内導入システムの特徴を明確にして、カベオラ介在性の細胞内導入の意義について明らかにすることを基本方針として、当初の計画通りに実験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
総額1,500,000円は以下の様な内訳で使用する予定である。物品費(培養・合成・分析のための試薬や器具類)として1,000,000円、旅費として国内旅費(高分子討論会)100,000円および海外旅費(コントロールリリース学会)300,000円、その他経費として共通機器使用料100,000円を予定している。
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