研究課題/領域番号 |
24650287
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺川 貴樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10250854)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 粒子線治療 / シスプラチン / ナノミセル |
研究概要 |
本研究では、X線に比べて腫瘍への線量集中性が優れ、高い細胞致死効果を持つ粒子線照射と、抗がん剤シスプラチンを腫瘍組織にのみ効率的に伝達して抗腫瘍効果を低副作用で誘発するナノサイズ高機能薬物運搬体(CDDPミセル)を用いることにより、難治癌に対して従来よりも低線量・低副作用で高い治療効果をもたらす新規化学粒子線治療法の開発を目的とする。本研究は2年間の研究期間であり、初年度の平成24年度前半に、粒子線照射用のビーム形成デバイスの開発、照射テストを経て、治療用粒子線を完成させた。後半からは腫瘍移植マウスを用いて試験的な治療実験を実施し、本治療法の投与線量、CDDPミセル投与時期・作用量等について治療プロトコルを決定した。 ビーム形成デバイスとしては、マウス腫瘍が対象となるため、腫瘍標的の大きさを直径10 mm程度を想定し、腫瘍標的の形状に合わせて陽子線を照射するためのボーラス、コリメータ、ブラッグピークを拡大するエネルギーフィルターを開発した。さらに、開発デバイスによる照射テストを実施し、水ファントムにおける線量形成により、所定の線量分布を形成することに成功した。 照射システム開発の完成後に実施した線維肉腫腫瘍細胞を移植したマウスを用いた試験的治療実験では、陽子線線量分布、陽子線の投与線量、CDDP投与量、併用治療時のCDDPミセル投与タイミング等の治療条件を設定し、腫瘍増殖遅延効果などをもとに治療条件の最適化を図り、治療プロトコルを決定した。 また、CDDPミセルによる腫瘍への薬剤集積を評価するため、マウスから摘出された腫瘍サンプル中の白金元素濃度をPIXE(Particle-induced X-ray emission)法により分析し、通常のCDDP投与に比べて効果的に薬剤が送達されていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度における当初の研究計画である粒子線照射用デバイスの開発およびビーム照射試験の実施、およびマウス腫瘍モデルを用いた試験的な治療実験による治療プロトコルの決定について、ほぼ計画通りに進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に作成した治療プロトコルに基づき、治療実験を平成25年度において実施する。右足後脚のみに腫瘍を移植したマウスを比較対照を含めた各種治療群の実験に用い、腫瘍体積の経日変化から腫瘍の増殖遅延効果、治癒率を評価する。 さらに、治療効果判定に、1 mm以下の空間分解能を達成している小動物用超高分解能半導体PET装置を用い、腫瘍内の糖代謝、低酸素状態の分布について、治療前・治療期間中にマウスが生きたまま随時診断する。 以上の治療研究結果を総括し、研究成果を学術論文、国内学会、国際会議等で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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