研究課題/領域番号 |
24650288
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
辻田 哲平 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40554473)
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研究分担者 |
内山 勝 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30125504)
姜 欣 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30451537)
安孫子 聡子 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40560660)
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キーワード | 手術計画 / 脳神経外科 |
研究概要 |
H25年度は,脳ベラにより脳の側面に存在する裂(シルビウス裂)を圧排し,視野と作業空間を確保する状況を想定し,最適な経路を逐次二次計画法 (Sequential Quadratic Programing Method, SQP) により生成するために問題の定式化について検討をした.脳裂に設置する脳ベラの位置姿勢により,脳組織にかかる応力と病変部周辺の術野の大きさは変化する.本研究ではこの変形によって生じる応力を最小にし,且つ,最低限の術野と作業空間が確保されるような経路を最適経路と定義し,最適化問題を定式化した.脳ベラの位置姿勢を決定変数とし,応力を最小化するように目的関数を設定した.また,拘束条件として応力,術野および作業空間に閾値を設け,閾値以上もしくは以内になるように与えることとした.この方針に沿って,まず脳実質に加え脳裂のなかに結合組織を付与した有限要素法 (Finite Element Method, FEM) モデルを作成し,指定した位置を切開することが可能なメッシュ修正プログラムを開発した.そして,切開した個所に脳ベラを配置し,脳組織にかかる応力と術野の面積を計算可能な有限要素法プログラムを開発した.逐次二次計画法においては応力等の計算を膨大な回数試行する必要があるため,高速性が重要である.また,脳ベラによる裂の圧排は脳組織に大変形をもたらす.そこで,Corotational FEMという物体の大変形の計算が可能であり,比較的高速な計算手法を用いた.また,術野の面積の計算は有限要素法で計算された組織の変形を可視化し,対象とする領域を画像処理によって求めるようにした.これらより,最適経路生成ソフトウエアの主要コンポーネントが揃い,病変位置に対して脳組織を傷つけずにかき分けて到達できる最適な経路の自動生成にむけて大きく前進した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,H25年度までに最適な経路を自動生成し評価実験を行う予定をしていたが,プログラムの高速化に時間がかかり,計画にやや遅れがでている.しかし,疎行列ソルバの変更,プログラムの各部の調整等により高速化することができ,最適経路生成ソフトウエアの開発の目処が立った.
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今後の研究の推進方策 |
今後,最適経路生成ソフトウエアを完成させ,様々なパラメーターを与えて経路を作成する.この生成された経路の妥当性の検証をゼラチン等で模擬脳裂を作成して行う.最適経路生成ソフトウエアで予測された変形と模擬脳裂の変形が一致するか,生成された経路が脳外科手術の観点からみて妥当かどうかを検証する.また,最適経路生成ソフトウエアの更なる高速化のために、複数のGPU (Graphics Processing Unit) の利用についても検討する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に,昨年度開発したソフトウエアと最適化計算ライブラリを組合せ,最適経路生成ソフトウエアを実現し,計算した最適手術経路の妥当性を評価した上で成果発表する予定であったが,人間の断層画像から作成した詳細な脳モデルに対して計算を行ったところ,想定以上に計算時間がかかることが分かった.そこで,同ソフトウエアの高速化に時間を費やし,妥当性の評価と成果発表を延期しため未使用額が生じた. 最適手術経路の妥当性の検証と成果発表を次年度に行うこととし,未使用額はその経費に充てる予定である.
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