本研究は、禁忌事項として使用制限される被験者にも適用が可能な、自走式カプセル内視鏡の開発を目的としている。狭窄部位等での滞留を回避し、より信頼性・安全性の高い診断等を遂行するには、カプセル本体の自走と姿勢制御が重要課題となる。その問題解決のために昨年度まで、(1)カプセル自走方式の開発、(2)滞留回避機能の付与を中心課題として研究を進めてきた。(1)ではリニア推進機構を利用したスライドおよびノック走行方式の2方式を検討し、試作機による腸管内壁モデル内における移動特性を実測評価して、その有用性を明らかにした。また(2)における本研究の滞留回避機構付与の独自性は、カプセル本体を前後2分割して各々を独立制御し、その駆動の合理的な組み合わせで任意方向への各運動を可能にする点にある。本研究ではカプセル前後室の外周に、互いに反対方向となるように施した螺旋構造に起因する駆動力の組合せを利用し、任意方向へのカプセル姿勢制御が可能であることを、試作機による実証試験により証明した。 本年度においては自走・滞留回避機能を容易に実現可能できるシステムとして、自走カプセルを駆動器とし、可撓シャフトにより作業カプセルを連結するカプセル列への応用を検討した。モーター駆動した走行カプセルを試作し、ベベルギヤボックスを介して作業カプセルの走行が容易に制御できる可能性を得ることができた。これにより胃カメラによる十二指腸先端へのカプセル供給と、盲腸部での大腸カメラによる排出回収を利用すれば、運動機能が低下している場合でも、的確な検査・治療が可能となり、さらに駆動カプセルは自走できるため、経肛門より逆行挿入による検査や治療も可能となる可能性を得た。助成期間において得られた研究成果は、「滞留回避機能を付与した自走式カプセル内視鏡の基本設計と実用化」として纏め、日本医療機器学会誌に投稿・審査中である。
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