研究課題/領域番号 |
24650297
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大嶋 佑介 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教(病院教員) (10586639)
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研究分担者 |
片桐 崇史 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90415125)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 非線形光学イメージング / 中空ファイバ / 内視鏡 / 深部イメージング |
研究概要 |
基礎生物・医学分野において,蛍光標識した分子を細胞レベルで可視化するイメージング技術は極めて重要である.しかしながら,生体組織深部のイメージングは,収差や散乱,吸収による像の劣化や,対物レンズの作動距離による制約により困難である.そこで,2光子励起蛍光や第2次高調波発生などの非線形光学効果を利用したイメージング技術の実用化が期待されている.特に,医療現場で治療や診断などへ応用するためには,顕微鏡による計測だけでなく内視鏡技術との組み合わせが必須である.そこで,内視鏡応用のための要素技術として,ハニカム状の断面構造を有する中空ファイババンドルを用いた新規画像伝送素子を開発し,非線形光学イメージングへの適用性の評価を行った.試作した中空ファイババンドルを用いて,蛍光ビーズの2光子励起蛍光イメージの取得に成功した.その結果,空間分解能は低いが充分な明るさの画像を得ることに成功した.現在,測定系全体のスループット,到達深度,得られた像の空間分解能の向上を目指して中空ファイババンドルや光学系の改良に着手している.また,実験と並行して超短パルス光伝送特性の調査として,近赤外フェムト秒レーザ光伝送時の損失,非線形特性,分散特性,クロストークについて理論シミュレーションによる検討を行っており,ハードウェア改良へフィードバックし,既存の石英ファイバよりもよりも優れた特性を持つ中空ファイババンドルを作製中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中空ファイババンドルの作製および顕微鏡を用いた評価実験については,予定通り進んでいる.性能評価のための中空ファイババンドルの試作においては,外径約1.2ミリメートル,コア径約80 マイクロメートルの素子を作製し,2光子蛍光顕微鏡にファイバカップリングするための光学系を構築した.構築した評価システムを用いた実験の結果,蛍光ビーズの画像取得に成功した.また,生体試料を用いた評価に関しても,予定通り実施し,2光子蛍光画像の取得に成功した.生体試料を用いた性能評価に関しては,当初の目標を充分に達成している.中空ファイババンドルの超短パルス伝送特性の評価に関しては,設備が整っておらずまだ実施できていないが,既存の2光子顕微鏡を用いて画像取得に成功しており,相対的な評価という点では達成できている.
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今後の研究の推進方策 |
生体深部より充分な品質の蛍光イメージを取得するための中空ファイババンドルおよび周辺光学系の設計指針を明らかにするという当初の目的を達成するため,フェムト秒レーザ光伝送における非線形特性,分散特性,クロストーク特性を踏まえて,生体試料の2光子励起イメージングにおける到達深度,空間分解能,感度について,具体的な数値到達目標を設定し,中空ファイババンドルシステムに求められる仕様を絞り込んでいく.中空ファイババンドルに関しては,小型実験モデル動物としてマウスを想定して,長さ2~3cm程度に留めて,伝送損失・波長分散を抑える.ただし,空間分解能を向上させるため,コア径を10マイクロメートル程度まで小さく設計することに挑戦していく.また,非線形イメージング用画像伝送素子の開発において有用な設計指針を提供するのみならず,他の高度イメージング技術(赤外分光イメージ,ラマン分光イメージ)にも拡張していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究遂行に必要な経費については,中空ファイババンドルの製作に必要な材料費,顕微鏡に組み込んで評価実験を行うために必要な光学部品,動物試料の標本作製に必要な試薬代,および動物の飼育にかかわる飼料代などが,消耗品費として必要となる.また,得られた研究成果を国内外の関連学会で発表し,また研究進捗に必要な情報を収集するための旅費が必要である.また,研究打ち合わせを東北大もしくは愛媛大で実施するため,研究代表者および分担者の旅費が必要である.また,研究成果を社会に向けて広く発信するため,誌上発表や学会発表にかかわる経費として,論文投稿料・英文校正料および学会参加費などが必要である.
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