歩行における足底感覚情報は重要であり、特に足圧中心(COP)の移動は前方への推進力につながるため,足底感覚障害を有する者はCOPの移動を感じられず歩容に影響を及ぼす.そこで我々はH24年度にCOPの移動を他部位でリアルタイムにフィードバックをさせる機器(基盤,足圧受信機,電極で構成)を開発した.H25年度には一側の足底感覚障害を有する症例での有効性が示唆された.今回,脊髄損傷症例に開発機器を使用し歩容が変化するか,またどの部分にフィードバックすることが効果的かを検証した. 対象は50歳代男性,L4脊髄損傷症例で足底感覚は重度鈍麻,装具装着下で平行棒内歩行が可能であった.方法は機器装着及び非装着(①)による歩行をニッタ社製gait scanで歩幅,歩隔,歩調を,ニッタ社製foot scanでピーク荷重値及びCOPの移動距離を計測した.電極は②僧帽筋上部線維③上腕外側④上腕後面に貼付した.測定は3回実施し練習も含め①~④をランダムで行った.①を基準値として,②~④に電極を貼付した際の歩行の変化を変化率として求めた. 結果は歩幅はいずれもほぼ変化がなく,歩隔は拡大傾向,歩調は低下した.ピーク荷重値は④でわずかに増大し,COPの移動距離は全て延長した. 本機器の目的はCOPの移動を感覚の残存する部分にフィードバックさせることであり, COPの移動距離の延長は期待通りの結果であった.一方で歩幅や歩隔に変化は認めず,歩行安定性への関与は認めなかった.また、フィードバック部位の差は明らかではなかった.
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