【目的】不顕性誤嚥による肺炎は高齢者で最も多く、予防対策は課題となっている。我々は、不顕性誤嚥の防御機構である咳反射、排痰行為、嚥下筋活動について、無拘束・無意識下で、簡便にかつ客観的に評価することを目的とした測定方法を開発し、有用性を検討した。【研究成果】開発した装置の概要を示す。石田が開発した24時間型積分筋電計を利用して、嚥下筋活動を測定し、かつ、ICレコーダと咽頭マイクによる嚥下音も録音する。さらに二つの装置を、コードで機器をつなぐことで、起動及び停止スイッチを一つし、嚥下筋活動と嚥下音のデータを同時に測定できるようにした。これにより、嚥下時に特有の音声波形を示す嚥下音が発生している時に行われる嚥下筋活動の様子を観察することを可能とした。また、咽喉マイクとICレコーダに、咳反射、排痰行為時に発生する音響も記録する。動力源をICレコーダの内臓バッテリーと乾電池とし、記録はmicroSDを使用することで、長時間の記録も可能としている。装置全体の大きさは、手で持てるほどであり、簡便性、携帯性にも優れている。 次に、本装置の臨床的意義を検討するため、健常成人9名(平均年齢21±2歳、男7名、女2名)に、1時間の安静時と歩行時における嚥下回数、嚥下筋活動、むせや咳払いなどの気道防御反応を測定した。結果、嚥下回数と咳払いなどの気道防御反応の回数に関しては、特に差は認められなかった。しかし、嚥下筋活動に関しては、安静時に比べ、歩行時の方が有意に高い結果が得られた。歩行時の方が、嚥下筋を使用する際に、筋活動を必要とする可能性が示唆された。これらの結果を今後、高齢者のデータと比較することで、不顕性誤嚥の予防目標を検討することができる。
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