片側下腿切断者の力学的評価として三次元動作解析装置による実際の荷重を考慮し、有限要素法を用いて三次元義足ソケットモデルを作製し、接触圧力分布の比較検討を行った。三次元動作分析と床反力装置を用いて、実際の下肢義足使用者の平地歩行、階段昇降動作の各動作を測定した。計測は、被験者の全身に35個のマーカーを貼り付けし、サンプリング周波数は100Hzとした。歩行は自由歩行とし、数度練習を行ったのちに計測した。階段は、床面と階段の下から1・2段目に、床反力計6枚を使用した。被験者には十分な練習を行わせた後、昇段と降段に分けて計測した。有限要素モデルは、下腿切断者のCTスキャンを基に、大腿骨遠位部および脛骨近位部よりなる三次元下腿切断モデルを作製した。下腿義足においては、全面接触式ソケットおよび主として膝蓋靭帯で体重を支持する非全面接触式ソケットの2種の代表的な義足のライナーをモデル化した。有限要素解析における平地歩行および階段昇降動作の荷重条件として、各立脚期を三期に分け、各期の膝関節部のフォース・モーメントのピーク値を採用した。拘束条件としては、ライナーの外面を全方向拘束とした。実際の運動解析と義足ライナーと断端皮膚との境界部を接触とした義足の有限要素解析により、ソケット-断端間における圧力分布について比較検討した。全面接触式ソケットでは、平地歩行、階段昇段時においても、断端の表面全体に分散した圧力分布を示した。非全面接触式ソケットでは、膝蓋靱帯部、脛骨・前内外側、膝窩部から下腿後面に一致した特定の部位に圧力集中を認め、特に階段降段時の初期に高い傾向を認めたことから、この時期の同部位を中心とした義足のフィッティングを重視することが大切であることが示唆された。解析結果と臨床との妥当性の検討を行い、2種の義足の接触部位と動態に関する実験結果について国内外の学会において報告を行った。
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