研究課題
加齢に伴い頻尿や尿失禁を伴う過活動膀胱の状態と、一方で膀胱の収縮力が低下する排尿筋低活動の状態を合併する。この相反する現象が加齢に伴う膀胱機能障害の特徴である。そこで、加齢に伴う膀胱平滑筋細胞間結合(ギャップ結合)の変化に着目して、若年ラットと老齢ラットを用いて加齢に伴う排尿障害メカニズムの解明を行った。SD雌性ラット3か月齢(若年ラット)と12か月齢(老齢ラット)を使用した。1. ウレタン麻酔下で両群の連続膀胱内圧測定を行った。2. 若年ラットを用いギャップ結合乖離薬(Carbenoxolone 3×10-3 mol/L)を膀胱内注入して等容量性膀胱内圧測定を行った。3. 膀胱内のギャップ結合蛋白 (connexin 43)をwestern blot法を用いて比較した。4. 膀胱の形態変化をMasson trichrome染色で確認した。結果、1. 連続膀胱内圧測定で、老齢ラットでは、若年ラットと比較して膀胱収縮圧が27%低下して残尿量の増加を認めた (p <0.01) 。2. 若年ラットによる等容量性膀胱内圧測定で、ギャップ結合乖離薬を注入後、膀胱収縮圧は徐々に減弱し消失した。ギャップ結合乖離薬をwashoutすると、膀胱収縮は再開した。3. 若年ラットに比べ、老齢ラットではconnexin43蛋白量が22%減少した(p < 0.01)。 4. 老齢ラットでは、若年ラットと比較して膀胱平滑筋が肥大、間質の線維増生を認めた。ギャップ結合蛋白の減少は、加齢に伴う排尿障害(排尿筋低活動)発生の原因の一つと考えられる。ギャップ結合乖離薬の膀胱内投与が膀胱収縮を減弱させたことから、膀胱ギャップ結合は、平滑筋細胞の細胞間伝達に重要な役割を果たしていることが示唆される。以上より、加齢に伴う排尿筋低活動は、膀胱ギャップ結合の低下により膀胱収縮の細胞間伝達が障害され引き起こされることが示唆された。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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