研究課題/領域番号 |
24650326
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
和田 佳郎 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80240810)
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研究分担者 |
山中 敏彰 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90271204)
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キーワード | 人工感覚器 / リハビリテーション / めまい / 平衡障害 / 耳石器 / 傾斜感覚 |
研究概要 |
重力情報を皮膚表面へ振動刺激する傾斜感覚適正化装置(TPAD)の最も効果的な振動周波数を検討した。周波数条件として80、160、240Hzの3種類を設定し、それぞれ約20名の健常被験者に対してTPADを20分間装着し、装着前、中、終了直後、30分後のHTPGainを測定した。座位、立位共にHTPGainの増大効果は160Hz刺激中が最も大きく、HTPGainの左右差減少効果は160Hz刺激終了30分後が最も大きかった。以上の結果から、TPADの振動周波数は160Hzに決定した。 160Hzを振動刺激として、軽量コンパクトな改良型TPADの製作準備作業を行った。主な改良点としては、①本体を従来のPCから軽量な専用機に変更する。②電源供給を従来の据え置き型バッテリーから充電式乾電池に変更する。③振動子をより軽量タイプに変更する。④振動子の固定方法をヘッドホンを改良した形状にする。 並行して、傾斜感覚の基礎データの蓄積を行った。これまでに健常人267人を測定し、HTPGainには左右差が認められなかったため、左右をまとめた平均±SDは1.01±0.12、基準値(平均±2SD)は0.78~1.24であった。また、頭部直立SVVの平均±SDは0.1±1.3度、基準値-2.4~2.7度であった。めまい患者に関しては53名の測定を行い、HTPGainの平均±SDは1.09±0.21と健常人に比べ有意に大きく(t-test p<0.001)、基準値から外れた者は22%で、そのほとんど(91%)はHTPGainが基準値より大きかった。一方、頭部直立SVVの平均±SDは-1.1±2.5度で、基準値から外れた者は25%であった。HTPGain、頭部直立SVVともに基準値から外れた者はわずか9%であり、HTPGainと頭部直立SVVの異常が生じるメカニズムは異なることをあらわしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
傾斜感覚適正化装置(TPAD)と名付けた人工耳石器装置の最も効果的な振動周波数を決定することができたことは、装置の実用化に向け大きな進展であった。また、めまい患者の基礎データを53名蓄積することができた。ただ、健常人の65歳以上の高齢者データが目標の20名に届いておらず、今後重点的に収集する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
不足している健常人の高齢者や女性のデータを重点的に収集し、年齢や性別の影響を加味したHTPGainの基準値を設定する。さらに他施設の協力も得て、めまい患者のデータの蓄積に努める。 軽量コンパクトな改良型TPADを完成させ、それを用いて健常人やめまい患者を対象に傾斜感覚適正化効果及びめまい症状の改善効果を検討する。
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