(目的)筋を伸張位に保持すると、筋の不動化にもかかわらず初期の3週間では筋肥大が生じることが動物実験にて報告されている。ところが、その拮抗筋は萎縮しやすい弛緩位になる点が問題であり、臨床には用いられてこなかった。そこで、筋の伸張位保持と弛緩位保持を交互に行わせれば(筋伸張位短縮位交互固定法)、拮抗筋も同時に筋萎縮の防止ができるのではないかと考え、動物実験にて4日間なら屈筋であるヒラメ筋と伸筋である前脛骨筋の萎縮防止が可能であることを確かめることができた。しかし、筋力が保持できたかどうかは不明であるため、実験的研究を行った。(対象)10週令のWistar系雌ラット24匹を用い、交互固定群、底屈位固定群、背屈位固定群、コントロール群の4群に分けた。(方法)固定開始後4日めに、4群のラットのヒラメ筋と前脛骨筋を摘出し、最大単収縮張力と最大強縮張力を測定した。その後、筋湿重量測定を施行し、組織学的検討を行った。(結果)底屈位固定群・背屈位固定群のヒラメ筋と前脛骨筋において、短縮位の筋は萎縮し、伸張位の筋は肥大または変化なしであった。しかし、交互固定群では両筋の筋萎縮は防止できていた。さらに、組織学的にも著変は認めなかった。しかし筋収縮張力に関しては、特に最大強縮張力において交互固定群・底屈位固定群・背屈位固定群の3群ともコントロール群に比較して弱くなる傾向が認められた。(考察)筋を伸張位固定して筋湿重量と収縮張力を調べたところ、筋湿重量は増加したものの収縮張力は減少していたという報告が過去にある。筋伸張位短縮位交互固定法は、伸張位固定による筋肥大効果を利用して筋萎縮防止を行うものであり、伸張位固定と同様に収縮張力の維持に関しては効果が期待できない可能性が高いと考えざるをえない。(結論)筋伸張位短縮位交互固定法のみによる筋力の維持には限界があり、さらなる手段の追加が必要と考えられた。
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