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2013 年度 実施状況報告書

上肢運動学習に関する遺伝子、神経成長因子、パフォーマンスの統合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 24650329
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

牛場 潤一  慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (00383985)

キーワードリハビリテーション / 神経科学 / 遺伝子 / 医療・福祉 / 運動学習
研究概要

当初計画では脳卒中片麻痺上肢に対する運動学習実験を想定していたが、上肢到達運動システムの肢位が肩関節周りの痙性麻痺を増悪させる例が散見されることを見いだし、その条件検討を進めた。具体的には、患者の取り込み基準の変更(軽度麻痺とした)、肩挙上角の低減(下方10度とした)にしたほか、上肢到達運動の速度を抑えることとした。
次に、運動訓練前後の末梢血を、運動側上肢肘部から採血し、外部業者に委託して遠心分離によって血清単離をおこない、BDNF抗体を提示したマイクロアレイを用いてELISA法でBDNF量を定量する具体的なプロトコルプロセスを確立した。また、口腔粘膜からDNAを抽出し、PCR法によってBDNF遺伝子の機能多型評価をおこなうプロトコルプロセスに関しても、研究協力者との緊密な議論を経て決定した。また、文献調査ならびに遺伝子データベースの利用により、全20カ所の一塩基多型候補部位を同定した。
また、昨年度得られた健常成人での結果を拡張するため、全15名での5日間運動訓練を実施し、磁気共鳴画像法による脳構造変化を定量し、体積増加の認められた複数の脳領域と、5日間にわたる運動学習曲線のパラメータ群に対して、ステップワイズ多重回帰解析をおこなった。その結果、一次運動野における初日の体積増加が、その後の5日間にわたる運動学習曲線を高精度に予測することが明らかになり、「運動学習により脳構造が変化する」のではなく、「脳構造が変化することで運動学習プロセスを促進する」ことが見いだせ、従来の概念に修正を迫る結果を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画どおり、末梢血BDNFとDNA塩基多型を検索するためのプロトコルは確定することができたものの、患者での運動解析については、運動課題時に痙性麻痺が増悪する例が見られ、想定外の事象に対する解決をする必要に迫られた。具体的には、患者の取り込み基準の変更(軽度麻痺とした)、肩挙上角の低減(下方10度とした)にしたほか、上肢到達運動の速度を抑えることとし、問題は解決されたが、その過程で時間のロスがあり、実際の本実験課題にまで移行できなかった点は、当初計画よりやや遅れていると考えている。しかしその一方で、健常成人を対象とした検討課題では、ニューロインフォマティクス解析によって「運動学習により脳構造が変化する」のではなく、「脳構造が変化することで運動学習プロセスを促進する」ことを見いだすことができ、従来の概念に修正を迫る結果を得ることができた。この点について想像以上の進展があったことから、計画全体としては相殺されて、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

まず、単日の運動学習実験(2時間程度)の前後で、末梢血中BDNF量の比較検討実験を実施する。成果がポジティブだった場合に、脳卒中片麻痺患者での実験に移行し、運動学習効果との関連を評価する。当初計画では、皮質上肢支配領域のマッピングを経頭蓋磁気刺激法によっておこなう予定であったが、平成24, 25年度での検討結果を踏まえて、平成26年度では引き続き、磁気共鳴画像法による評価として研究を推進する。
以上の実験から、神経成長関連因子の分子細胞生物学的プロファイルが、実際の運動遂行性向上と運動神経系の機能再構築に及ぼす影響を明らかにする。これにより、生命の階層性の問題を統合的に論じる素地を創出し、片麻痺上肢の運動機能回復に関わるメカニズムを遺伝子-分子-細胞-ネットワーク-動作の横断的観点から整理して、次代のリハビリテーション神経科学研究を形作りたい。

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公開日: 2015-05-28  

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