研究実績の概要 |
[研究背景および目的]ストレッチングは運動強度が高くないため,主に準備運動として扱われているが,交感神経活動抑制効果があり,心臓の後負荷軽減効果が期待される.特に血管スティッフネスが増加した高齢者には有用な運動と考えられるが,後負荷を実際に計測している報告はない.実効大動脈エラスタンス(Ea)は末梢血管抵抗と動脈のスティッフネスを統合したもので,後負荷評価に有用な指標である.本研究ではEaを非侵襲的に計測するシステムを作成し、高齢者におけるストレッチングが後負荷に及ぼす効果を評価した. [研究成果] Wave intensity計測システムと心エコーよりEa計測システムを作成した.また,自律神経機能評価のためパワースペクトラム計測によるLH,HFを算出するソフトを作成し,ストレッチ前後の自律神経機能について検討した.ストレッチング施行前に計測したEaは年齢と有意な相関を認めた.ストレッチング施行群と非施行群に分け,2か月後のEa,LH/HF比を計測したところ,両者に有意差を認めなかった.しかし,50歳以上のストレッチング施行群において日常より運動している群と運動していない群に分けたところ,運動していない群においては運動している群に比べてストレッチング施行前のEaとβは有意に高値であり.ストレッチング後にEaとβは低下し改善傾向を示した. 以上のことより,ストレッチングは日常で運動をしていない中高年にとっては心負荷軽減作用があると考えられた.特に運動療法が困難な高齢者においては積極的にストレッチングを行うことが有用であると考えられた.
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