研究課題/領域番号 |
24650337
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
宮本 靖義 中部大学, 医療技術実習センター, 講師 (00612665)
|
研究分担者 |
縣 信秀 浜松大学, 保健医療学部, 助教 (00549313)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 筋損傷 / リハビリテーション / ラット |
研究概要 |
超音波は、皮膚の創傷、腱損傷、骨折において、細胞の増殖やタンパク質の合成を促進し、組織の治癒を促進すると言われているが、筋損傷に対する効果については不明であった。しかし近年、超音波が骨格筋損傷からの回復を促進させる結果が報告された。ただ、効果的な刺激の方法、量、期間については不明であり、そのメカニズムについても不明な点が多い。そこで、平成24年度は、定量的な筋損傷量を持つモデル動物を用いて、筋損傷からの回復を促進するのに効果的な超音波刺激の方法、量、期間を、組織学的、生理学的手法を用いて定量的に評価した。まず、麻酔下にて、ラット(Wistar 系雄)の足部を小動物用足関節運動装置の足底板にセットし、電気刺激装置と表面電極を用いて、ラット前脛骨筋に電気刺激を行い、筋収縮と同時に足底板を底屈方向へ回転させ、前脛骨筋に遠心性収縮を加えることにより筋損傷モデルを作製した。超音波刺激は、低強度の 30 mW/cm2 と、一般的な強度として用いられている 0.5 W/cm2 の2種類を用いた。実験期間を21日間とし、超音波刺激を行う時期を、損傷2時間後、48時間後、48時間後から毎日行う群を作製して比較した。筋損傷からの回復促進効果の評価には、麻酔下にて足関節背屈筋群の等尺性収縮時の足関節背屈トルクの測定と、筋線維横断面積の測定を用いた。その結果、筋損傷2時間後に 0.5w/cm2 の強度で超音波刺激を行うと、足関節背屈トルクの回復が促進し、21日後の筋線維横断面積が超音波刺激を加えない群に比べ有意に大きかった。よって、筋損傷2時間後に行う超音波刺激が機能的・組織学的に筋損傷からの回復を促進すると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画では、筋損傷からの回復を促進するのに効果的な超音波刺激の方法、量、期間を評価することとなっていた。当該年度に実施した研究成果から、筋損傷2時間後に行う超音波刺激が筋損傷からの回復を促進することが分かり、おおむね研究の目的を達成できていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、超音波によってマクロファージや筋衛星細胞などがどのような影響を受けるのかを、組織学的、生化学的に評価し、超音波による筋損傷からの回復促進効果のメカニズムを以下の方法を用いて明らかにする。 (1)筋損傷モデルの作製方法:麻酔下にて、ラット(Wistar 系雄)の足部を小動物用足関節運動装置の足底板にセットする。次に、電気刺激装置と表面電極を用いて、ラット前脛骨筋に電気刺激を行い、筋収縮と同時に足底板を底屈方向へ回転させ、前脛骨筋に遠心性収縮を加える。 (2)超音波刺激の方法: 0.5 w/cm2 の強度で筋損傷2時間後に超音波刺激を行う。 (3)組織学的評価:一般的なマクロファージを同定するCD11b抗体、F4/80抗体、炎症性に働くM1マクロファージを同定するCD64抗体、抗炎症やサテライト細胞の活性などに働くM2マクロファージを同定する CD163 やCD206抗体を用いて、どの種類のマクロファージが多く集積しているのかを測定する。また、筋衛星細胞を同定するPax7抗体、活性化した筋衛星細胞を同定するMyoD、Myogenin抗体を用いて、筋衛星細胞の活性化を評価する。 (4)生化学的評価:マクロファージが分泌するサイトカインであるIL-4、IL-6、IL-10、TNF-α、TGF-βや筋分化調節因子であるMyoD、 Myogenin、 Myf-5 などの発現量や mRNA量をウェスタンブロット法、RT-PCR法を用いて解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品の値引きにより、消耗品の支出が予定より少額となった。このため24年度に予定していた物品の購入は、平成25年度研究計画の予算と合わせて前半に予定することとした。
|