再現性のある筋損傷モデルラットを用いて,超音波刺激が筋損傷からの回復を促進できるかどうかを検証し明らかにすることを目的とした.8週齢Wistar系雄性ラットをCON群,遠心性収縮(EC)により前脛骨筋を損傷させたEC群,遠心性収縮による筋損傷後に超音波刺激(US)を施行したEC+US群に分けた.前脛骨筋に対する遠心性収縮は,小動物用足関節運動装置を用いて角速度200 deg/secで足関節を他動的に底屈運動させることにより行った.超音波刺激は,周波数が3MHz,照射様式が間欠的照射, 照射出力強度が0.5 W/cm2 ,照射時間が10分間とし,遠心性収縮2時間後に1回のみ行った.筋損傷からの回復過程の評価には,機能的評価,組織学的評価と生化学的評価を用いCON群,EC群,EC+US群を経時的に比較した.機能的評価として,経時的に電気刺激による最大等尺性足関節背屈トルクを測定した.組織学的評価として,遠心性収縮21日後にラット前脛骨筋を採取し,凍結横断切片を作製し,筋線維横断面積を測定した.また,生化学的評価として,Western blot法により筋分化調節因子であるMyoDおよびmyogeninの発現量の経時的変化を測定した.その結果,遠心性収縮14日以降のEC+US群の足関節背屈トルクは,EC群に対して有意に大きかった.EC群の筋線維横断面積はControl群と比較して有意に小さく,EC+US群とCON群の間には有意な違いはなかった.EC+US群のMyoDとmyogeninの発現量は,遠心性収縮96時間後からEC群と比較し多く発現している傾向がみられた.今回の実験から筋損傷後早期に1回だけ与える超音波刺激は,筋損傷からの回復を機能的にも組織学的にも促進する効果があることが分かった.また,この超音波刺激による筋損傷からの回復促進は,超音波刺激が筋衛生細胞の活性化に影響を与えたためと考えられた。
|